2016年7月号

2020年に向けた構想計画

「戦略と構想」で企業を成長させる

岸波 宗洋(事業構想大学院大学 教授、事業構想研究所所長)

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事業活動いおいて、課題定義は、一体どのようにすればよいか?そもそも、これが間違っていると、どんなに経営資源を投下し、優秀な外部専門家やコンサルタントを雇っても、成果がでない。「戦略と構想」から考えてみたい。

最初から成功するイノベーションなど存在しない。だからこそ発散的、試行的に対処しなければならないし、その柔軟性こそが成否の鍵となる。しかしながら、殆どの企業からすれば「イノベーションは戦略」であり、恒常的テーマには成り得ていない。だから、タイミングを逸したり、イノベーションしないこと、が課題にならない。
(写真と本文は関係ありません/photo by Adobe Stock/everythingpossible)

大方の課題設定は現象論に過ぎない

事業構想研究所では、様々な分野(有形、無形、民間、公共等)や規模の企業に対して経営コンサルティングを実践している。一般的に、コンサルティングの発露は、企業、事業、製品サービスが持つ「課題」である。コンサルティングもひとつの無形財サービスであり、よりよく売るためには、既にニーズが明確な「課題解決」という領域性においてサービスを提供すること自体、至極当然のことのように思える。

しかしながら、この「課題」が面倒を引き起こす。「課題」自体を精確に引き当てるためには、経営にまつわる内部/外部環境を詳細に分析しなければならない。ところが、企業側が課題と思しき事象(本質を得ていないという意味で)を「課題」としてブリーフィングしてしまう、あるいは、コンサルタントが大した調査もせず早合点してしまうために、クリティカルではないことを延々とやり続けてしまうのである。結果、コンサルタントは「使い物にならない」とレッテルを貼られ、クライアントは湯水の如くキャッシュをドブに捨ててしまうことになる。実は、コンサルティングにネガティブな話はつきもの、なのである。どこぞのメジャーファームがナショナルクライアントから出入禁止になった、とか・・・。

上記のような状況において重要なことは、双方が「課題」を「課題」ととらえないこと、である。つまり、顕在化された課題は、大方が現象論に過ぎず、その課題の本質は全方位的であり、深淵でもある。さらに続ければ、経営コンサルティング領域は、「全経営との対峙」を前提とするのだ。

戦略と構想の違い
イノベーションとは

事業構想研究所において、とりわけ筆者がコンサルティングを志向する場合、カウンターパートが経営トップであろうが事業担当者であろうが関係なく、まずは全経営視点での「戦略と構想」を考えた上で、各レイヤー(担当者の管理階層)に落とすことにしている。

では、「戦略と構想」とはなにか?自身もコンサルタントとして活躍されたハーバードビジネススクールのクリステンセン教授の言葉を借りれば、既存資源を最大化する「Maximize core」とさらに領域を拡張する「Extend core」は、戦略であり、既存資源に依存しない新領域の創出「Create New」は構想と捉える(一部筆者の考え方を含む)。この場合、戦略と構想は全く思考の異なるものであるにも関わらず、殆どの企業において同様のロジックで語られてしまう。例えば、戦略において「選択と集中」は一般的思考であるが、構想においてそれは通用せず、クリステンセン教授は「実験と学習」と言っている。要は、最初から成功するイノベーションなど存在せず、だからこそ発散的、試行的に対処しなければならないし、その柔軟性こそが成否の鍵となることを示唆している。

しかしながら、殆どの企業からすれば「イノベーションは戦略」であり、恒常的テーマには成り得ていない。だから、タイミングを逸したり、イノベーションしないこと、が課題にならないのだ(必要なら戦略設定すればよい、という考え方)。

この「戦略と構想」を前提としたコンサルティング事例を紹介したい。

大手通信企業のグローバル戦略策定

某大手通信企業の中で、特にグループ統括する持ち株会社の志向はグローバルだ。既に国内市場がコモディティ化した中で、ドラスティックな成長を見込めるビジネスはなにか?を前提に経営を考えている。

この場合、戦略としての捉え方は、前述のように既存資源の最大化、拡張化である。どんな資源を、グローバルにプレゼンスとして提示できるのか?を考える。そのためには、グローバル自体を正しく知らなければ、内部資源だけを評価しても本当の価値にたどり着けない(ダイヤモンドが豊富な国に少しばかりのダイヤモンドを持ち込んでも商売にならない)。国によって資源価値は違う、のである。そのために、足掛け3年コンサルティングスキームを実践しているが、初年度において、徹底的にグローバルリサーチを行った。 そして2年目には、既存資源の延長線上にとらえられるクラウドコンピューティングやIoT・デジタル領域を戦略示唆することが成果となった(最大化、拡張化)。そして3年目には、某大手通信企業の資源領域からある種逸脱した構想(普遍的イノベーションテーマ)を掲げるべく、現在プラクティスを継続している(イノベーション)。

本来、戦略は短期的志向で構想は中長期的志向と捉えられるかもしれない。しかし、それは間違いだ。前に述べたように、構想は企業のアンダーグラウンドとして常に持ち続けるもの、である。上梓のタイミングで戦略化を計ろうとしても遅きに失する。一方で戦略は、短・中・長期にわたり、既存資源を持って売上げを最大化するために必要なアウトプットである。この整理ができるだけでも、充分に経営の健全化と成長性を担保できるようになるだろう。最後に、もうひとつの事例を紹介する。

大手建設資材企業では5000アイデアから構想

大手建設資材企業では、1000億を目指すコンサルティングを志向している。より現実解としての(売上、利益想定がし易い)既存資源を前提とした戦略を数十個策定し、資源に依存しない構想にいたっては、5000以上のアイデアの中から数百個、数十個に絞っている。選ばれた50名程度の研究メンバーによって発想されたアイデアは、感度、精度の高いものばかりだ。基礎的な画力を測るデッサン力は、描けば描くほど上手くなるというが、アイデアの発想も同様である。考えれば考えるほどにブラッシュアップされていく。それは、企業にとって普遍的な努力であり、経営資源を増やす行為、持続的成長の源なのだ。

 

 

コンサルティングに関するご相談、面談希望は、事業構想大学院大学 事業構想研究所 経営相談窓口まで。
e-mail. jken@mpd.ac.jp

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