2015年5月号

MPDサロンスピーチ

イノベーションは未来志向から 「あるべき姿」を基点に逆算

矢吹博和(ラーニングプロセス 代表取締役)

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新しい価値創造が求められる今、イノベーション創出へ向けた取り組みに注目が集まる。見える化を活用した思考法、発想法、会議ファシリテーションのスペシャリストである矢吹博和氏が、イノベーションを生み出す秘訣を語る。

矢吹博和氏が代表を務めるラーニングプロセスは、視覚会議®という独自開発の「イノベーション創出のための問題解決手法」を専門に提供するコンサルティング会社。富士通、本田技研、日産自動車などの大手企業を中心に、新たな企画やモノ、価値を生み出す創造の場のニーズに合わせ、視覚会議ファシリテーターの派遣・養成、ワークショップ企画運営、イノベーション創出のための場づくり導入のコンサルティングなどを行っている。

事業構想大学院大学のサロンスピーチにて講演し、活発な意見交換がなされた

全員で 「うん」とうなずく

イノベーション創出、新規事業の構築には、まず、向かうべき目標、ビジョンが必要だ。目標設定の手法には、過去の経験やこれまでやってきたことの延長線上で未来を考える「フォアキャスト(forecast)」と、あるべき姿から逆算して考える「バックキャスト(backcast)」の二つがある。

矢吹氏は「創造の場で議論を進めていくためには、過去の延長線上ではなく、ゼロベースであるべき姿を考えていくのが近道です」と話す。特に新規イノベーション系のチームは、様々な分野、部署から集められることが多い。方針も価値観も違うメンバーが一つにまとまるためには、まず、あるべき姿を設定し、そこからテーマを作り、アイデアを出していくことが重要だ。

ひと口に未来やゴールの「あるべき姿」を設定すると言っても、簡単にはいかないのが実情だ。視覚会議では、議論を徹底的に見える化することで、約40分で6つから7つのキーワードを抽出する。このキーワードには、複数人が選んだものもあれば一人しか選んでいないものもある。つまり、少数意見も全て反映される。

その後、このキーワードを全部使って、全員が作文をする。「十分に議論して抽出したキーワードを使い作文すれば、同じような方向性に収束します。未来の“あるべき姿”を求めて、まずは全員で“うん”ということが大切です」

多様な意見や価値観の中でチーム全員の納得度が高い状態で「あるべき姿」、未来のビジョンを合意形成する。これが、イノベーション創造の第一歩となる。

問題解決は未来志向で

共通の「あるべき姿」、ビジョンが決まれば、次に、それを実現するためのアイデア、解決策が必要となる。新しいアイデアを出す場合、複数の人が共にアイデアを出し合う「ブレイン・ストーミング」をすることは多いだろう。しかし、複数が同時に自由にアイデアを出し合う場では、発言の多い人と少ない人との差が大きく出てしまう。この問題を解決するため、矢吹氏はドイツで開発された「ブレインライティング」という手法を用いる。規定用紙に5分間で自分のアイデアを3つ書き込む。終えたら、用紙を隣へ回す。6人で30分回すことで、一枚の用紙に108のアイデアが書き込まれる。

ラーニングプロセス代表取締役 矢吹博和氏

「全員が黙ってもくもくと考え続ける手法です。こうすることで、チーム全員のアイデアを集めることができます」

また、問題の解決策発想には、ロシアで生まれた発明的問題解決論「TRIZ」をベースに開発したカードツール「智慧カード」を発想のトリガーとして使用する。

従来、問題解決には設定した目標に対し足りない部分を補う「ギャップアプローチ」を採用することが多いが、矢吹氏は「創造の場では別のアプローチである、ポジティブアプローチが適している」と言う。

ギャップアプローチが、過去に対する論理的な原因分析を不可欠とするのに対し、ポジティブアプローチはあるべき姿を実現するためのアクションにフォーカスする。過去や現状分析にとらわれず、実際の行動に重点を置くことで、結果として現状の問題点も解決していく。「ポジティブアプローチは、あるべき姿を起点にするため、ゼロベースで考えることができます。参加者の意識は理想やあるべき姿に向き、未来志向になります」

一人ひとりがオーナーシップを

視覚会議には3つのフェーズがある。第一に、課題に対し「あるべき姿」を全員で合意形成する、第二に「合意したビジョンに対するアイデア・解決策を発見する」、そして第三が「解決策のブラッシュアップ」だ。全員の知恵を見える化し、全員が納得して行動できるシナリオを創り上げる。

会議の主役となるのは「ヒト」だ。参加者はもちろんだが、会議の進行管理、議論の見える化を担うファシリテーターも大きな役割を果たす。ファシリテーターに大切なのは、常に中立的立場で進行し、結論や議論の方向性には一切関与しないことだ。中立的な第三者が会議を進行することで、より客観性のある結論が導きだせる。

参加者全員が自由に創造的に短時間で実現可能性の高い解決策を創り上げる。これが視覚会議だ。参加者全員が平等にアイデアを出し合うことで、一人ひとりにオーナーシップが芽生える。イノベーションの創造には、自らが「やってみたい」と思う、情熱が重要だ。


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