一般的マーケティングリサーチとは異なる「フィールドリサーチ」

構想案を構想計画へ結びつけるのが「フィールドリサーチ」である。事業構想におけるフィールドリサーチは、一般的なマーケティングリサーチとは異なる特徴を持つ。仮説を立て、「手ごたえを感じ、意見を聞く」その手法とは。

©H.AZUMA

事業構想とフィールドリサーチ

事業構想は思考空間にとどまっていてはならない。さもないと妄想に終わってしまうだろう。すなわち現場との連結が不可欠なのである。現実空間と往復させる中で、構想された事業案は息づいてくる。その接点をつくりだすのが、「フィールドリサーチ」である。フィールドリサーチは、自らの構想案が現場でどのように受け止められるかを検証する手順であり、最初の顧客を見つける仕事だと考えてもよいだろう。それは、いきものとしての事業が変わり続けるために環境を把握するための方法でもある。

フィールドリサーチは事業構想サイクルの1段階として位置づけられているが、実はフィールドリサーチの能力は、事業の構想力と深く関係している。たとえばイノベーション研究の第一人者クレイトン・クリステンセンの著作『イノベーションのDNA』をひも解いてみよう。そこにはイノベーターが持つべき重要な能力として以下の5つがあげられている。

  1. (1)関連づける力
  2.  
  3. (2)質問力
  4.  
  5. (3)観察力
  6.  
  7. (4)ネットワーク力
  8.  
  9. (5)実験力
  10.  

(4)の「ネットワーク力」は、単に多くの人脈を持っているということではない。いかに多様な背景や考え方を持っている人と幅広く繋がっているかをあらわす指標である。多様な背景や考え方を持っている人と話し合うことでアイデアは磨かれていくからである。(2)~(5)はまさしくフィールドワークの中で育まれる能力であり、新しい事業をうみ出すイノベーターとしての事業構想家は、すぐれたフィールドリサーチャーでもある必要性を示している。

フィールドリサーチとは何か?

フィールドリサーチは事業構想サイクルでは、「発・着・想」「構想案」の次の段階に位置づけられている。その内容は、「手ごたえを感じ、意見を聞く」というものである。自分がつくりだした構想案に対して、潜在顧客や市井の人々がどのように感じるのかを偏見なく聞き出し、構想案を構想計画につなげていく段階である。

ただし、実際の構想づくりにおいては、現場からのフィードバックはどの局面においても重要とされるべきものである。アイデア創出の段階でも、現場に身をおくことで発・着・想がえられることが多く、「構想案」や「構想計画」の作成段階でも必要に応じて現場に出向くことも重要である。

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