2014年9月号

社会イノベーションの起こし方

農業は「家業」から「産業」へ 規制緩和と市場参入チャンス

月刊事業構想 編集部

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「攻めの農林水産業」を掲げる安倍政権の下、農業規制緩和が本格化する。企業参入要件の緩和、さらには農協の見直しは企業にどのようなチャンスを生むのか。

規制緩和で企業参入が増えれば、農業ITなどの技術も進化するはず

農業生産法人の規制緩和

日本再興戦略改訂2014では、企業による農業生産法人への出資規制緩和、農協中央会制度の自立的新制度への移行、といった政策が示され、次期通常国会への関連法案の提出が予定される。日本総合研究所・創発戦略センターの三輪泰史主任研究員は、改革のポイントを次のように指摘する。

「注目すべきは『企業の知見を活かし』という文言です。過去の農業政策は、農家を守ることに主眼を置き、企業はどちらかと言うと脅威として位置づけられていました。成長戦略では、農外企業を呼び込み、新しい風を起こそうという国の狙いが見えます」

国の取り組みの背景には、農業の担い手不足の深刻化と、増加し続ける耕作放棄地の問題がある。耕作放棄地はこの20年で2倍の39.6万haに拡大。これは滋賀県の面積に匹敵する。大規模農家や農業法人を育てるための規制緩和は避けて通れない。

企業参入に対する規制緩和は、2000年頃から段階的に行われてきた。特にインパクトが大きかったのは、2002年の一般法人のリース方式による農業参入許可。法人経営体数は2000年の5272法人から、13年に1万4600法人まで拡大した。

改訂成長戦略では、農業生産法人の要件について、出資要件(議決権要件)と役員要件を大きく見直す方針が示された。25%までに限定されていた一般企業の出資比率は50%未満まで緩和。また、企業から改善を求める声が多かった、役員に占める農作業従事者要件も大きく緩和される方針だ。これに規制緩和で企業参入が増えれば、農業ITなどの新より、農業生産のノウハウのない一般企業側も役員を出しやすくなる。

「今回は企業による農地所有は認められませんでしたが、出資比率等で農家と企業の対等な形ができ、かなり理想に近いところまで緩和されたと思います。今後は、農業委員会の改革を含め、企業が長期間安定的に大規模農地をリースする仕組みを作ることができるかがポイントでしょう」

農協改革のインパクト

もう一つのポイントは、農協中央会(JA全中)制度の抜本的な見直し。農協からの反発は強く、改革がどこまで実現するかは不透明だが、これまで独禁法の適用除外などの優遇を受けてきたJA全中の役割を見直す意味は大きいだろう。

「ベストプラクティスの普及など、JA全中だからこそできる事業やノウハウ、ネットワークは確かに存在し、組織の重要性は変わりません。ただ、米の減反廃止や農協に入る農家の減少といった課題の中で、改革は避けて通れないでしょう」

今後は、これまで農協が事実上独占してきた、農業周辺のビジネスに参入のチャンスが広がる。「農家への資材供給、卸売、金融、営農指導などの分野は有望です」価格競争の原理が入り、資材等の“割高”な農協価格が是正されれば、農家経営の効率化・低コスト化も進むだろう。「特にITを使った農業コンサルティングは期待できるマーケットではないでしょうか。技術的には進歩しているものの実用化が進んでいなかった農業ITが、花開く時が来ると思います」

家業から産業へと変わり始めた日本の農業。新規参入のチャンスは確実に拡大している。

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