アイカ工業と京大 病院と地域、医療と介護の継ぎ目をなくす研究を開始

アイカ工業は、京都大学経営管理大学院に「ホスピタルマネジメント研究寄附講座」を設置し、運営を開始したと2017年11月1日の記者会見で発表した。

 

寄附講座では、京都大学経営管理大学院の岩尾聡士特定教授が提唱する「IWAOモデル」に基づき、地域全体での高齢者ケアの研究と実践を行う。IWAOモデルは、地域のコミュニティを基礎的な単位として、医療と介護を統合し、地域全体に病院機能を持たせるもの。ヘルスケアサービスの効率化と質的向上を目指しつつ、病院と在宅ケアをつないで支援する。

 

アイカ工業は、2009年6月に名古屋大学大学院経済学研究科に寄附講座を開設し、IWAOモデルに基づくケアの実現に向けた基盤構築を支援してきた。京大の寄附講座では、医療・介護が必要な高齢者が激増する2025年を前に、より実践的な研究、社会実装を行う計画だ。京大の寄附講座の設置期間は、2020年3月までの2年半。寄附総額は5000万円。

 

寄附講座では、日本医療研究開発機構(AMED)の事業である、個人情報を多職種でシェアする仕組みであるPLR(Personal Life Repository;個人生活録)による、訪問看護の支援システムの研究開発に参加する。同支援システムについては、短時間で普及させるために、ソーシャルフランチャイズの形で整備する予定だ。「日本は訪問看護師が少ない。看護師の働き方を見直し、訪問看護師を増やし、いかに看護師を町の番人とするかがポイントになる」と岩尾教授は話した。

 

同時に、訪問看護ステーションを核に、半径2km圏内の介護、リハビリ、食事の提供、家事などをそれぞれ担当する、小規模・分散・地域密着型のビジネスモデルを構築する。その担い手となる若い社会起業家を養成する「岩尾塾」を、東京・名古屋・京都で開催する。国の医療財政的にも病院ではない場所でのケアが求められる中で、地域全体で弱者を見守り、医療ではなく生活モデルでケアできるようにすることが目標だ。

 

アイカ工業は、化成品や建装・建材のメーカー。IWAOモデルに関連して、病院向けの床材や、消臭効果の高い壁材、車いすでも使いやすい家具などを開発した。同社は現在、2017年10月25日施行の「新たな住宅セーフティネット制度」に注目している。この制度は、高齢者や低所得者などが住居を確保できるようにするための制度で、賃貸住宅の空き家を活用し、2020年までに17.5万戸の「入居を拒まない住宅」の登録を目指すとしている。この制度の実施に伴い、高齢者に合わせた空き家の改修需要が期待できることから、アイカ工業では清須市の本社内に研究開発施設を整備し、商品開発をスピードアップする計画を立てている。

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