上手になると失敗する? 謝罪はコミュニケーションの起点
謝罪は単なる儀礼ではなく、人間関係の修復や道徳的コミュニケーションを担う重要な行為である。哲学者・倫理学者である東京大学の古田徹也准教授に、謝罪とはそもそもどういったものなのか、また、謝罪に正解はあるのかを伺った。また、記事のより詳しい内容は、音声配信でこちらから視聴可能。
炎上を招く謝罪のおおきな誤算
誠実さを疑う世間の厳しい視線
――謝罪会見で炎上を避けるには、まず何が大切でしょうか?
謝罪というものを、自分や自分の属する組織が重大な出来事を引き起こしてしまった場合に行なうときには、本来、誠意や真摯さが欠かせません。メディアなどで炎上する謝罪会見では、「本当に反省しているか」というふうに、誠意が疑われているケースが多いですよね。たとえば、形式的な言い回しや、相手への配慮が感じられない態度は、世間から簡単に「謝っているフリをしているだけだ」とみなされてしまいがちです。
実際、私も研究の一環として、謝罪をめぐるコミュニケーションの失敗例を数多く分析しています。そこでは、過ちを犯した当事者がまず被害者に真っ先に謝らず、他の関係者や世間一般へ向けて先に頭を下げてしまうケースも目にします。それが「本当に謝るべき相手を軽視している」という印象を与え、さらなる批判を招いてしまうことがある。

また、過度によく準備され演出された謝罪も、しばしば逆効果になります。洗練された発言や台本通りの態度は、当然のことながら、「計算ずくではないか」「演技をしているだけではないか」と疑われてしまうからです。たとえ言葉や姿勢の上では「模範解答」を示していても、そのことがむしろ誠意や真摯さに疑念を抱かせることにもなりうる。
加害者がいて被害者がいるような謝罪の場合、それは本来、
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