JVA2024 量子コンピュータ、EVの起業家が大臣賞を受賞
独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)は、2024年12月11日、「Japan Venture Awards(JVA)2024」の受賞者を発表した。Japan Venture Awardsは、スタートアップの経営者とベンチャーキャピタリストに対する表彰で、社会における起業家精神を醸成することを目指している。
応募対象は創業後概ね15年以内の中小企業、NPO法人、合同会社(LLC)などの経営者または代表者で、2024年度は236件と過去最大の応募があった。
科学技術政策担当大臣賞には、キュエル代表取締役の伊藤陽介氏が選ばれた。キュエルは、量子コンピュータの開発を行う研究機関や企業に、制御装置を開発・販売している企業。大阪大学発のスタートアップである。高性能で使いやすい制御装置「QuEL-I」を提供しており、2021年の創業から3年で販売台数は累計82台、売上高11億円となっている。64量子ビットの超電導量子コンピュータの構築に使われた実績があり、この実績を生かして海外を含めた事業展開を目指す。
経済産業大臣賞は、フォロフライCEOの小間裕康氏が受賞した。同社は、安価で大量販売できる商用の電気自動車(EV)とITインフラを開発・販売している企業。物流業界のニーズに特化しており、大手企業との連携により全国に整備網を展開している。バッテリー管理や再利用を前提にしたバス・タクシーなどの商用EVにも展開していく予定だ。
事業内容、活動実績、経営者の資質を総合的に見て評価する中小企業庁長官賞には、学校教育に企業の知見やリソースを使えるようマッチングするサービスを提供するARROWSの代表取締役社長の浅谷治希氏、知的障害のあるアーティストの作品のライセンスを管理し、企業がビジネスで使えるよう展開するヘラルボニーの代表取締役/Co-CEOの松田崇弥氏(月刊事業構想2020年8月号参照)が選ばれた。
この他、チャリチャリ代表取締役社長の家本賢太郎氏が中小機構理事長賞を、ストックマーク代表取締役CEOの林達氏がJVA審査委員会特別賞を、それぞれ受賞している。チャリチャリはシェアサイクルを通じたまちづくり、地域交通課題解決に取り組む企業(月刊事業構想2023年2月号参照)。ストックマークは生成AIのプロダクトへの実装を進める企業で、それぞれの組織に特化した生成AIの提供や、国産生成AIの開発を進めている(月刊事業構想2024年2月号参照)。
JVA2024の審査委員会の委員長を務めた早稲田大学教授の東出浩教氏は、受賞者の経営する企業にブートストラップ型(投資家などからの資金ではなく、自社の事業利益を成長投資に充てる)のベンチャーが増えていること、シリアルアントレプレナーの受賞者が以前に比べ多くなったことに講評で触れた。そして「グローバルに大きく成長する企業を生み出す上では、複数回起業して成功を収めている人に注目し、支援するという策もありうる」と話した。