高知県の地域商社 ふるさと納税事業で利益を生み、ソーシャルビジネスに投資

(※本記事は経済産業省近畿経済産業局が運営する「公式Note」に2024年10月3日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

一般社団法人nossonの代表理事を務める小野加央里さん

一般社団法人nosson は、地域再生推進法人であるNPO法人日高わのわ会から生まれた高知県日高村を拠点とする地域商社である。日高わのわ会と日高村役場と連携することで、関係人口を創出しながら地域を盛り上げている。

近畿経済産業局公式noteマガジン「KEY PERSON PROFILE」、シリーズ「地域と価値とビジネスを巡る探求と深化」第12回は、一般社団法人nossonの代表理事を務める小野加央里さんです。四国経済産業局とのコラボ企画です。

取材日(場所):2024年1月(於:eat & stay とまとと(高知県高岡郡日高村)

nossonでは具体的に、日高村のふるさと納税の受託運営、ふるさと納税を通じて“いきつけ”の地域を応援するサイト『いきつけのうぜい』のほか、関係人口創出事業『いきつけいなか』、地域人材マネージメント、地域課題と社会課題を組み合わせた産学官民連携事業の実施などを行っている。

「日本一、おばあちゃんが幸せな村」をビジョンに掲げ、参加型の地域商社として、様々な方を受け入れ、その人らしさを表現しながら、地域規模にあった新たな協働と共創に取り組んでいる小野さんに、社会的な価値と利益とは何か、という問いを投げかけ、インタビューは始まった。

継続が必要な分野だからこそ、自分のワクワクが大切

人は『ワクワクすること』が原動力だと思う。
事業も同様で、ただ「社会課題を解決する」だけでは、内発的動機としては弱く、取り組みを続けることができない。この分野は長く続けない限り成果もでない。同じような地域課題が山積みになる中、自分にしかできない課題解決のための企画を生み出し、それに全力で取り組むことで、誰も見たことがない絶景に出会えると思うからこそ、取り組むのだと思う。

私は、東日本大震災をきっかけに全国でボランティアを始めた。
モノが溢れた消費社会が果たして幸せなのか、消費を促すことが幸せな世界を作っているのだろうか、きっとそうではないと思い、その答えを探すために地域でボランティア開始した。

元々、社会的課題を感じて地域に飛び込んだわけではない。
ただ、資本的価値以外の別の本質的な価値を知りたかった。そのボランティアや協力隊での地域活動を通じて、社会課題を見出し、それを解決するために会社を創業した。

NPO法人日高わのわ会の事務局長の安岡千春さんは、私に本当に大切なことを気づかせてくれた。事業成長が大切なのではなく、人が役割を持ち生き生きと活動することで、結果経済価値も生み出す視点を教えてくれた。

小野さんと安岡さんが話している様子
「もっと外に広めることで、他の地域の人たちも生活がしやすくなる、日本の未来につながる」と小野さんは私たちにはっきりと言ってくれたと語るNPO法人日高わのわ会の安岡さん。日高村にとっても、もちろんわのわ会にもなくてはならない存在になりつつあると語る。(写真:https://ikiiki-being.com/report/20230428_02/

社会課題を解決しながら、いかに金銭的利益を生むか

誰かのために社会課題を解決するだけではなく、みんなで一緒に解決することに楽しさや幸せを感じている。自分のワクワクの1%を入り口に99%のみんなの笑顔が広がっている事業を作っていきたいと思う。

「社会的課題解決」という言葉にはどうしても犠牲感が伴う印象がするが、本当はそうではない。みんなで一緒に取り組むのだ。それによって、自分自身の成長につながるし、その成長がなければ事業は続けていけない。

一方で、地域課題や社会課題を解決しながらも、サステナブルな社会を目指すためには、それをちゃんと収益化していく必要があるのも事実だ。
そのためにも、地域規模に合わせて事業を考えていくときに、N=1のマーケティング手法を用いるようにしている。事業の対象として1人の顧客を中心に据え、その人のためのソリューションを生み出し、商品の差別化をつくるように心がけている。

小野さんが話している様子
短期ではなく中長期で見たときに生まれる副次的効果にまでしっかり光をあてていくこと、そこを評価してくれることで、ソーシャルビジネスは持続していくと語る小野さん

また現状、社会課題の解決事業に取り組むことが出来ているのは、日高村からふるさと納税の運営の委託を受けている点は大きい。ふるさと納税事業で利益を生み、それをソーシャルビジネスに投資する。人口1万人以下の自治体と連携する地域商社の一つのロールモデルになれると考えている。

『高齢者を日本のヒーローにするソーシャルビジネス』に挑戦する

当社が実施している「いきいきソーシャルアクション・プロジェクト」という事業は、人生100年時代に向けて、高齢者の方々がもつ余力や持て余す時間を労働分野に活用できないかという想いと、コロナ禍で増えたメンタル不調者をどうにか減らしたいという、2つの想いから始まったものだ。

「いきかえる、いきなおす、いきいき」プロジェクトのコンセプトを記した図
「いきかえる、いきなおす、いきいき」プロジェクトのコンセプト(https://ikiiki-being.com/report/20230428_02/)(※画像クリックで拡大)

第1弾では、「土佐いきいき豆」の復活栽培を開始し、高齢者の方々にいきいき豆の生産者にする取り組みを行っている。これらの原材料を使用して開発している「とまとまめゼリー」は、高知大との共同研究により、ストレス過多による不調を軽減する可能性が見えてきている。メンタルヘルスの市場は、世界規模で考えても広がりが大きく、今までにない製品ポジションを獲得したいと考えている。

私たちは、身の丈にあったスモールビジネスを立ち上げていくことを目指している。地域で、各機関を巻き込みながら三方よしのソーシャルビジネスを構築する場合、利益を生み出すまでに、相当な時間がかかると考える。

また、今回のようなソーシャルビジネスは、高齢者の方々に生産者となってもらうことで、社会での新たな役割が生まれ、新たな人との交流が生まれ、やりがいやいきがいが生まれる。
それが、結果として介護費用の削減やフレイル予防、認知症発症予防につながる可能性もある。

事業を通じて、経済的価値以外にもこのような社会保障問題を副次的に解決していく部分も評価してもらえると嬉しい。民間の事業と違い、地域課題を解決しながら利益を生む活動は、短期的スパンで成果を求められると難しいため、長期的に評価してもらえるとありがたい。

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近畿経済産業局 公式note