クラフトビールの新規開発を促進するマイクロ流体デバイス 醸造・飲料に革命
(※本記事は『THE CONVERSATION』に2024年10月6日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

ビール業界の拡大と共に、Hazy IPA(ヘイジー・ペールエール)のような新しいスタイルのクラフトビールが登場し、高品質維持のため醸造メーカー各社は現在、ビールの成分を分析する新たな方法を競って模索している。
しかし、ビール内の分子が風味にどのように影響を与えるかを分析するのは難しい。ビールには多種多様な分子が含まれており、そのすべてを把握することが困難だからだ。この問題に対処するため、私たちビクトリア大学の研究チームは、ホップフレーバーを強化するため、O/W(oil-in-water)型のWをビール(Beer)にするエマルション(乳化物)、いわばO/B(oil-in-beer)型乳化物を作成するための、使いやすい「ラボオンチップ(Lab-on-a-chip)」デバイスを開発した。
「ラボオンチップ」技術、またはマイクロ流体技術とは、主に薄いプラスチック片のような、透明で柔軟な素材で作られた小さな検査ツールで、チップ上に構築された髪の毛ほどの細さの管に液体を流し、分析することができる。
この技術は食品科学分野ではあまり使用されていないが、乳化物の生成においては非常に適している。乳化とは、混ざり合わない2種類の液体のうち一方が小さな滴となって他方に分散した状態であり、食品業界でも広く使用されている技術である。
例えば、サラダドレッシングは一般的に油と酢(水に似た液体)を混ぜて作られる。油と水は通常混ざり合わないため、マスタードや卵のような乳化作用をもつものを加え、油の小さな滴を酢の中に安定的に分散させることで、滑らかな状態を実現する。
同様に、ビールの中ではホップオイル(ホップから抽出される精油)が水相であるビール内に安定的に分散する。これを安定化させる分子の特性を理解することで、ホップの香りが強いビールを醸造するための新たな手法が開発できるだろう。
新しいビールを創るための、新しい開発方法を創る
ビールの醸造には、モルト(大麦)、ホップ、水、酵母という4つの主要な原材料に関する正確な理解が求められる。それぞれの材料には複雑な成分が含まれ、長年利用されてきたものの、その化学的な相互作用については未だに不明な点が多い。
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