悩ましい「学び直しとマネー問題」を解決。リスキリングに使える助成制度を活用しよう。

働き方や技術が大きく変化する今、「何かを学び直したい」「スキルを身につけてキャリアの幅を広げたい」と考える社会人が増えています。しかし、そこで立ちはだかるのが、「お金の壁」です。資格講座や大学院の費用は決して安くありません。そんなときに活用できるのが、「リスキリングのための助成制度」です。今回は、国が提供する代表的な制度をご紹介し、活用のヒントや事例もあわせてお伝えします。
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自己投資=全額自己負担ではない?

「学び直しにはお金がかかるから無理」とあきらめていませんか?
近年、政府は「人への投資」を重要な政策と位置づけ、社会人の学び直し(リスキリング)を支援する制度を拡充しています。給付金や補助金を活用すれば、数十万円から百万円以上の支援を受けられることも。
つまり、「興味はあるけれど経済的に難しい」と感じていた方でも、制度を上手に使えば、学び直しがもっと身近な選択肢になるのです。

代表的な3つの助成制度

1. 教育訓練給付金(厚生労働省)

対象:厚労省指定の講座、大学・大学院、各種資格講座など
厚生労働省が実施する「教育訓練給付金」は、社会人のキャリアアップや転職支援を目的とした制度です。
種類は以下の3つがあります。

●一般教育訓練給付金
●特定一般教育訓練給付金
●専門実践教育訓練給付金(注目

特に「専門実践教育訓練給付金」は、以下のようなメリットがあります。

●受講費の最大70%を支給年間上限56万円・最長3年間で168万円)
●給付には雇用保険の加入年数(原則3年以上)や、事前のキャリアコンサルティングが必要
●介護・保育・IT・経営など、実務に直結する分野が中心
●社会人大学院(専門職大学院など)も対象

たとえば、MBA(経営管理修士)や私が所属する社会構想大学院大学など、働きながら通える社会人向け大学院コースも対象となっており、学費の多くをカバーできるケースもあります。
「大学・大学院に通うなんて無理」と思っていた方でも、助成金があることで現実味が増すかもしれません。専門実践教育訓練は、受講前に必ず「訓練前キャリアコンサルティング」を受けることが要件とされているのも特徴です。

▼教育訓練給付制度の講座検索はこちら▼
https://www.kyufu.mhlw.go.jp/kensaku/

2.リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業(経済産業省)

経済産業省が実施する比較的新しい制度で、特定の講座に対して最大70%(上限56万円)の補助が受けられます。

民間企業や大学と連携した実践的なリスキリング講座が対象
AI・DX・マーケティング・デザイン思考など、成長産業系スキルに特化
講座修了後、一部キャッシュバックされる形式(事前登録が必要)

オンライン中心の講座設計が多く、働きながらでも受講しやすいのもポイントです.

▼補助対象講座の検索はこちら▼
https://careerup.reskilling.go.jp/worker/search/

3. 自治体・地域独自の支援(例:東京・神奈川・大阪など)

各自治体が独自にリスキリング支援を実施している場合もあります。

  • 東京都:「未来人材育成事業」でIT講座の受講料を全額補助
  • 神奈川県:求職者向けに無料の職業訓練コースを提供
  • 大阪府:「産業人材リスキリング支援事業」など

自治体ごとに対象者や補助内容が異なるため、地元のハローワークや都道府県の公式サイトで確認するのがおすすめです。

情報に触れることが第一歩

このように、リスキリングを支援する制度は充実しつつありますが、情報に辿り着くまでのハードルがあるのも事実です。
まずは「制度がある」ということを知り、講座の種類や対象条件などを調べてみることが、学び直しへの第一歩です。

【活用事例】社会人大学院で広報×経営を学んだ40代女性の場合

「私は教育訓練給付金を活用して、社会人大学院に通いながら『広報×経営』の専門性を高めることができました。仕事と両立しながら2年間学び、卒業後は経営視点での広報戦略の提案や施策に取り組んでいます。
なんとなく広報の仕事が好きで続けてきましたが、40代に入り『このままでいいのかな?』と感じるようになり、もっと体系的に学びたいと思うようになりました。
給付金があったからこそ、学び直しに踏み出す勇気が持て、今のキャリアにもつながっています。」(40代・広報職)

このように、大学や大学院での本格的な学びも支援対象となっています。
資格取得だけでなく、キャリア形成につながる体系的な学びにも制度を活用できる可能性があるのです。

「いつか学びたい」を「今」に変えるために

リスキリングは、キャリアの選択肢を広げるだけでなく、自分の市場価値や仕事のやりがいにも大きく関わります。
助成制度を活用すれば、「学びたいけど無理そう」という思い込みを解きほぐすきっかけにもなるでしょう。

まずは、自分がどの制度の対象になるかを調べてみるところから始めてみましょう。
人生100年時代、学びに遅すぎるということはありません。
調べていく中で、「自分はなぜこの講座を受けたいのか?」という動機や目的を明確にすることも重要です。
「学び直し」を「キャリア構築」へとつなげていくために、目的と向き合うプロセスも大切にしたいところです。

そのために、私たちキャリアコンサルタントのような専門家が存在します。
学び始める前の情報収集や相談の場として、キャリアコンサルティングを活用するのも有効な一手です。今日が人生で一番若い日です。
「いつか」ではなく「いま」に注目し、意思決定をしていくことが、未来のキャリアをつくる第一歩になるでしょう。

個別相談はこちらから受け付けています。リンク先の下段に申し込みフォームがあります。

酒井
酒井 信幸
キャリアコンサルタント/社会構想大学院大学 事務局長 兼 先端教育研究所研究員