障害や特性がある子どもたちのために 自分らしく全員が楽しめるIT教育カリキュラム

(※本記事は「協働日本」に2024年12月25日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

宮ノ原さんと横町さんの写真

協働日本で生まれた協働事例を紹介する記事コラム「STORY」。

実際に協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回は、グッジョブグループ 代表の宮之原 綾子氏にお越しいただきました。

グッジョブグループは、鹿児島を拠点に福祉事業を展開する、障害や特性のある方が自分らしく働き、自律した生活を送れるための様々な支援事業を展開するグループ企業です。

インタビューを通じて、協働プロジェクトを続けてきたことによる成果、変化や得られた学び、これからの期待と想いについて語っていただきました。

(取材・文=郡司弘明・山根好子)

協働日本と共に作り上げたオリジナル「実践ITカリキュラム」

ーー本日はよろしくお願いいたします。まずは、グッジョブグループの事業について教えていただけますでしょうか?

宮之原綾子氏(以下、宮之原):よろしくお願いいたします。

グッジョブグループでは鹿児島を拠点に、障害や特性のある方が自分らしく働き、自律した生活を送れるよう支援する福祉事業を展開しています。

1歳半から大人までを対象とし、障害や特性を抱える方に向けて15の事業所を運営しており、誰もが「障害の有無に関わらず、自分らしく『幸せ』な人生を選択できる」社会づくりを目指して活動や事業を展開しています。

ーーとても幅広い支援やサービスを展開されているのですね。

宮之原:最初に始めたのは大人向けの就労支援事業所です。

当初とても驚いたのは、生まれ持った特性による生きづらさからメンタルヘルスにも課題を抱える方達が多くいらっしゃったことです。

そうした背景から、障害を持つ方々がいきいきと「自分らしく」働ける場所として、鹿児島市内のセンテラス天文館の図書館併設カフェ「Brew」や、かごしま水族館内の「水族館の果実堂」といった実店舗を運営するようになりました。

そこで働く当事者の方々の中には、大学を卒業し一度就職を経験した方も少なくありません。その方々は、本人の保有する能力が高くても、社会のルールの中で働きづらさを感じ、その能力を十分に活かしきれず大変苦労してこられました。

私たちもそういった方々をサポートしていく中で、就職して社会に出る前に、もっと自己理解・自己選択ができるような場を用意できないかと考えるようになり、それがきっかけで、中高生向けの放課後等デイサービス(※以下、「放デイ」)をスタートさせることになりました。

そしてさらに早期支援を提供したいと、1歳半から学童期までを対象とした児童発達支援・放デイサービスを……と事業を拡大してきたという経緯になります。

※注釈
就労支援事業所
就労を目指す方に対して、職業訓練や生活支援を提供します。具体的には、働くためのスキル習得、職場実習の機会提供、就職後のサポートなどを含みます。

放課後等デイサービス(放デイ)
障害のある子どもを対象に、放課後や休日に生活能力向上のための支援や学習・遊びの場を提供します。子どもの成長や自立を促す支援を行うほか、学校との連携や家庭の負担軽減にもつながるサービスです。

児童発達支援
主に未就学児(0歳~6歳)の障害や発達に心配のある子どもを対象に、遊びや療育を通じて発達を支援します。また、社会性や日常生活のスキルを育む場を提供します。保護者への支援や相談も行い、家庭と連携した支援を重視します。

オンラインで子どもに支援を行っている様子

ーーありがとうございます。続いて、協働日本とのお取り組みをスタートしたきっかけについて教えてください。

宮之原:きっかけは、知人から「面白い取り組みをしている方がいるよ」と協働日本の代表である村松さんを紹介いただいたことです。

村松さんとお話をさせていただいた際に、地域企業を支援している協働プロの中には「ITのプロフェッショナル」が参画していると伺いました。

その時ひょっとすると、専門的なスキルや経験を持つITのプロ達に、放デイの子どもたちと関わってもらうことで、様々な変化を生み出せるのではないかと期待が膨らみました。

さっそく、私たちが運営する中高生向けの放デイサービス「グッジョブテラス」の支援をお願いしました。

そこから現在まで取り組みは継続しており、そこで生まれたIT教育カリキュラムが大変評判が良く、放デイの子どもたちにとって素敵な変化をたくさん生み出してくれました。

ーーなるほど。オリジナルのIT教育カリキュラムの立ち上げ経緯を詳しく教えてください。

宮之原:取り組みを始めた当時はちょうど、「グッジョブテラス」がオープンする直前のタイミングでした。グッジョブテラスでは、発達障害や特性がある中高生を対象とし、コミュニケーションやソーシャルスキルのトレーニングを行い、自己理解を促すカリキュラムを行っています。そこで実施される学習カリキュラムの一つとして、実践的なIT教育に力を入れたいと考えていました。

既に世の中にある学生向けのプログラミング教材としては、海外のIT教材がすでに広く知られております。はじめは「グッジョブテラス」のカリキュラムとしても検討したのですが、小学生でも取り組める手軽さやゲームなどを作ることができる面白味がある一方、卒業後の就労で活かせるスキルにつながるのだろうか?という疑問が解消されず、導入を躊躇していました。

そんな時に「大手企業で活躍される、ITスキルのある協働プロ」に、より実践的なITスキルを子ども達に教えてもらえないだろうか?と考えたのがカリキュラム開発の出発点です。

普段、子どもたちが接するのは学校の先生や事業所で働く医療・福祉資格職のスタッフが中心です。

このカリキュラムを通じて知識を吸収するだけでなく、いま現役で社会で活躍してるプロフェッショナルの方々から学ぶという機会自体も大きな成長の機会になると期待しました。

ーー協働日本にとっても当時、新しい取り組みでした。一緒に教育の形や、その意義を言語化していったのですね。

宮之原:現在、協働日本さんが伴走支援を行う企業の多くは、サービスや製品の開発や社員教育の分野で協働プロの支援を受けていますが、グッジョブグループは、実際に提供するサービス自体───「実践ITカリキュラムの講師」として協働プロに参画してもらえないかという、少し特殊な相談だったと思います。

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