【セミナーレポート】「女性人財」が組織を変える 育成と対話の秘訣
事業構想大学院大学仙台校は2025年12月18日、セミナーおよび大学院説明会「女性人財が組織を変える~事業構想につながる"育成"と"対話"の仕組み~」を開催しました。会場となった仙台校での対面参加に加え、オンライン配信も行うハイブリッド形式で実施され、企業の人事担当者や組織活性化に強い関心を持つ参加者が多数集まりました。
長谷部牧氏提供
登壇したのは、株式会社東日本放送で女性初の部長や執行役員を歴任し、現在はWill☆Heart代表として人財育成に携わる長谷部牧氏です。長谷部氏は、昭和から令和まで四十三年半にわたりテレビ局の現場から経営層までを駆け抜けた経験をもとに、女性人財が持つ感性や経験を新事業の芽として活かすための組織アップデートについて語りました。
制度整備の先にある構造的課題と女性活躍の現在地
現在、多くの企業で女性活躍推進のための制度整備が進んでいますが、現場からはリーダーが増えない、あるいは真の変化が起きていないといった停滞感を訴える声が絶えません。長谷部氏はこの背景に、現場の声が経営に届かないという構造的な問題があることを指摘しました。かつて自らが女性初の肩書きを背負い、男性優位の社会で開かない自動ドアに突き当たってきた痛烈な経験から、女性が本来持つ力を引き出すためには個人の努力だけでなく、組織そのもののアップデートが不可欠であると説きました。
未来を自ら定義する構想力は全社員が持つべき財産
本セミナーの核心は、女性の構想力へのフォーカスです。長谷部氏は、構想力を未来を描き、社会や組織の課題を自ら定義し、解決の道筋を自ら作る力と定義しました。事業構想を経営資源の活用と捉えるならば、個人のキャリア構築は自分の強みの活用と言い換えられます。構想力は一部のエリートだけの特権ではなく、現場を知るすべての女性、ひいては若手社員までが持つべき財産であることを強調しました。
その後、長谷部氏は構想力について言及。構想力はまず現場の小さな違和感を拾う観察から始まり、バラバラな事象から課題の本質を見つける意味付け、そして理想を描く構想化を経て、まずは小さく試すプロトタイピングというプロセスを辿ります。特に生活者視点や共感性に優れた女性は、この構想力の核を作るプロセスにおいて高い親和性を持っています。しかし、こうした力を育むために最も不足しているのが対話です。長谷部氏は組織のコミュニケーションを、指示命令である上位下達と、双方向で考えを深め自分自身も変化していく対話の二つのスタイルに分類しました。女性活躍が停滞している組織は上位下達に偏る傾向がありますが、女性社員のブレーキを外すのは、業績指導ではなく未来を語り合う安心な対話の場に他なりません。
対話のデザイナーとして人事が担うべき役割
組織を対話型へアップデートするために、長谷部氏は人事が対話のデザイナーとしての役割を担うべきだと提言しました。具体的には、未来を語るためのワンオンワンや経営層とのラウンドテーブルの仕組み化、マネジメント層への問いかけスキルの浸透、そして外部リソースの活用による思考の停滞のリセットが有効な手段となります。
また、対話の基本は信頼関係にあり、相手が対話を通じて変化し成長することを信じて問いかけを続ける姿勢こそが求められます。女性の力を生かすことは、現場の声を未来を切り開く力に変えることであり、それこそが企業の事業構想を加速させるエンジンとなります。女性活躍を人数の問題から価値創造の源泉へと捉え直す視点こそが、これからの不確実な時代を勝ち抜く組織変革の鍵となることを示唆し、セミナーを締めくくりました。その後に行われた大学院説明会では、仙台校での学びや社会人向けの修学支援制度についても詳細な解説が行われました。