伝統的ワイン生産手法「フィールドブレンディング」 災害にも強い事業として注目

単一品種のワインが主流である現代において、フィールドブレンド(混植混醸)手法によるワイン「ゲミシュター・サッツ(Gemischter Satz)」は伝統への回帰であり、未来を見据えた新しいビジネスの形でもある。(※本記事は米NYに拠点を置く非営利組織が運営するウェブマガジン、Reasons To Be Cheerfulから許可をいただき翻訳・転載しています。)


2002年8月、オーストリアを壊滅的な洪水が襲った。数日間にわたる激しい雨の後、ドナウ川が氾濫し、国の広範囲が水没、1万軒以上の住宅が被害を受けたり、破壊されたりした。

洪水が引いた後、ワイン生産者のライナー・クリスト氏は、ウィーンの自分のブドウ畑の被害を調べた。「見るも無惨でした。腐敗やカビが至る所に広がり、ブドウ畑の斜面全体が影響を受けていました」。被害調査の最後、伝統的なスタイルで複数のブドウ品種が混植されている、一族がもつ最も古いブドウ畑にたどり着いたとき、彼は驚いた。「その畑だけ、すべてが無事だったのです」と彼は振り返る。

彼の祖父は、19世紀半ばまで標準的であった古代のワイン栽培法「フィールドブレンド」についてよく語っていたが、クリスト氏はそれを古臭い思い出話としか受け取っていなかった。その頃は、単一品種のブドウ畑とハイテクなアプローチが未来の道だと誰もが信じていた。「洪水被害を受けても無事だったブドウ畑を見たとき、初めて祖父たちは正しかったのかもしれないと考えました。彼らは科学的な裏付けがほとんどない中、自然を注意深く観察し、役立つものを見つけていたのです」とクリスト氏は述懐する。

「ゲミシュター・サッツ」を生産するクロスターノイブルク市ヴァイドリング教区にある古いブドウ畑(copyright : Wolfgang Pichler / Flicker)
「ゲミシュター・サッツ」を生産するクロスターノイブルク市ヴァイドリング教区にある古いブドウ畑(copyright : Wolfgang Pichler / Flicker

クリスト氏のブドウ畑は現在85年を迎え、ウィーン産ワインのブランド「ゲミシュター・サッツ」として知られる、優れたフィールドブレンド式のワインを今も生産している。クリスト氏はこのほとんど忘れ去られたワインを、近年再び人気を取り戻させたウィーンのワイン生産者の一人だ。

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