超加工食品が悪いわけではない 最新技術で栄養素を添加し健康の味方にする研究

(※本記事は『THE CONVERSATION』に2024年10月9日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

ベイクドビーンズなどの超加工食品の缶詰が並ぶスーパーマーケットの棚
超加工食品は安くて便利で、たいてい美味しい。 Copyright: Alf van Beem

超加工食品(Ultra-Processed Foods:UPF)は肥満から心臓病にいたるまで、現代社会の多くの病気と関連していることから、現在の栄養学で「悪者」とされる存在である。しかし、多くの栄養学者は「超加工」という用語が混乱を招くだけではないかと疑問を呈している。この言葉は、食品の製造方法だけに焦点を当てており、カロリーや栄養素といったほかの重要な要素を無視しているからだ。

私の研究は、超加工食品を問題視するのではなく、解決策の一部にもなり得ることを示唆している。食品科学の進歩により、現在では低カロリーで栄養価が高く、かつ手頃な価格の加工食品を作り出す技術が存在するのだ。

超加工食品をどう定義するかについて意見の一致はない。しかし、栄養学と公衆衛生学の学者であるカルロス・モンテイロ氏が提唱した一般的なアプローチがある。モンテイロ氏は約15年前にこの用語を生み出したが、大幅に工業的加工が施され、多くの場合複数の添加物を含む食品を「超加工食品」と定義した。平均的な食事に占める超加工食品の割合は、ポルトガルでは約10%であるのに対し、ドイツでは46%、英国では50%、米国では76%にも及ぶ。

超加工食品には3つの大きな利点がある。安価で、便利で、そしてたいてい美味しいことだ。特に手頃な価格であることは重要な要素になる。

食品は大量生産することによって、コストを抑えられる。たとえば、英ウィガンにあるハインツの工場は、世界最大のベイクドビーンズの製造工場だ。1日に300万缶も生産されているおかげで、ベイクドビーンズの缶詰は確実に広範囲で、手頃な価格で購入できる。

1961年に、英ハートフォードシャー州チョーリーウッドの科学者が、パンの新しい製造方法を開発した。今日、英国のパンの80%以上がこの方法で作られている。このパンは、従来のパンよりも柔らかくて日持ちする上、安価だ。

白くて柔らかそうな薄くスライスされたパン
スライスパン以上に美味しいものって何でしょうか?

超加工食品は手頃な価格のため、特に低所得層にとって日常的な食材となっている。英国では約30%の子供が貧困状態にあるため、超加工食品を食生活から排除することを訴えるには、貧困家庭がより新鮮で栄養価の高い食品を購入できる方法を考える必要がある。現在の超加工食品は、完璧な食事を提供しているわけではないが、金銭的に困窮している際のカロリー源になる。

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