舞鶴をIT人材育成の拠点に 官民協働で進める行政DX

天然の良港を持ち、軍港時代の歴史遺産なども豊富な舞鶴市。2019年度のSDGs未来都市・SDGsモデル事業にも認定されている同市では、ICTを活⽤した業務やサービスのデジタル化に取り組んでいる。舞鶴市役所でデジタル化・スマート化のリーダーを務める吉崎⽒に聞いた。

相手の状況で使い分ける
アナログとデジタル

京都府舞鶴市は2019年7月に内閣府の『SDGsモデル事業』に認定されたが、早くから『舞鶴版society 5.0』を掲げ、民間企業や教育機関などと連携し、デジタル技術を積極的に導入して持続可能なまちづくりに取り組んできた。

吉崎 豊 舞鶴市SDGs未来都市推進本部チームリーダ、
総務部 デジタル推進課長

舞鶴市情報部門担当の吉崎氏は、「国を挙げてデジタル化を推進するなかで、少し先をみながら、他がやらないようなことにも挑戦してみたいと思いながら取り組んでいます」と話す。

同市では2019年度に、手書きの書類や帳票を読み取りデータ化するAIOCRや、デスクトップ作業の自動化ツールRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入している。

昨年の定額給付金事業では、国は電子申請を推奨していたが、実際には紙による申請が大半を占めた。当時マイナンバーカードの交付率が今よりも低迷していたこともあり、最初から電子にしたい行政と、市民の実態との間に隔たりがあることが浮き彫りになった形である。同市では紙の申請内容をAI-OCRで電子データに変換して事務手続きを行った。この経験から、現在行われているワクチン接種の予約業務は、一方的にデジタルを推奨するのではなく、紙とデジタルを併用している。

ノーコード・ローコード型で
刻々と変わる状況に対応

ワクチン接種は、デジタルにあまり馴染みのない高齢者優先で始まった。医師でもある多々見良三舞鶴市長は、ウェブ予約は行わず、市が指定した日時・場所に来てもらう集団接種方式の採用を決定。まず、接種の意向確認と、会場までの移動に支援が必要かといった希望の確認書類を郵送し、返送された意向確認はがきはAI-OCRで読み込みデータ化した。

集団接種方式で行われたワクチン接種

「高齢者は電話での問い合わせが多いので、コールセンターの機能は充実させました」と吉崎氏。コールセンター業務のサポート機能として電話番号から台帳データを呼び出すことができるセールスフォースのサービスクラウドを導入し、処理を効率化した。

64歳以下の意向確認ではウェブと紙を選択できるようにしたところ、年代が下がるにつれウェブからの申請が増えているという。

「デジタル化を進めるには、こちらの都合や思いだけで押し付けるのではなく、住民の状況に応じた運用が大切だと感じました」

今回のワクチン接種では接種会場の変更や1コマあたりの接種人数の見直しなど刻々と状況が変化した。従来型のシステムでは急な変更は難しいが、舞鶴市が導入したシステムはコードを書かずに、あるいは少ないコードでプログラミングができるローコード・ノーコード型だったため、状況に応じて容易にシステムを組みなおすことができた。

現在は、意向確認からコールセンターでの処理、接種会場での集計までバーコードを使ったワンシステムで、スムーズに対応できているという。

業務効率化で生まれた人材と
時間の余裕を市民のために

吉崎氏は「デジタル化に関し今はいろいろな言葉が飛び交っていますので、まずは『デジタル化』を正しく理解する必要があると思っています。市役所の場合、行政のデジタル化を進めると同時に地域社会の情報化を進める必要もあります」と話す。

そういう思いで取り組んでいる1つが内部業務のスマート化である。多くの地方都市がそうであるように、今後は舞鶴市の人口も減少していく。吉崎氏は、人口減に対応した行政のスリム化を実現するために内部業務のデジタル化を進めたいと考えている。

2つ目の取り組みは窓口業務のスマート化。1つの手続きのためにいくつもの窓口を回ったり、何度も同じことを記入したりしなくてもよい仕組みや、役所に足を運ばなくても手続きができる仕組みをつくりたいと考えている。

3つ目はデジタルと親和性の高い子育て世代が十分にこの恩恵を受けられるような仕組みづくりである。現状、子育て関連の各サービスを利用する際には、サービスごとにそれぞれの窓口で申請書を書かなければならない。手続きをまとめて利便性を高めると同時に、デジタルで蓄積されたデータを利活用し次の施策に活かす、EBPMの実践につなげたいと考えている。

「スマホ1つで手続きが完結する仕組みができればスマートですし、若い世代には地域で率先してICTの普及に貢献する人材になっていただきたいという夢も描いています」

また、ICTの利活用で業務を効率化すれば、人材や時間というリソースを有効活用できる。

「行政が地域に飛び出して市民と向き合う時間を作ることもできます。自分も含め、職員がそういうことを自発的に行う文化も根づかせたいです」

官民連携で教育環境を整備
時代が求めるIT人材を育成

舞鶴市ではこの5月にセールスフォース、近畿職業能力開発大学校 京都校と連携協定を締結した。

連携協定締結式の様子

舞鶴市にはICTやプログラミングを学ぶことができる専門教育機関があるにもかかわらず、そこで育った優秀な人材の多くが市外に流出している。今回の連携協定によって、官民協働で舞鶴市に最先端のIT教育環境を整備し、IT人材を育成するとともに、テレワークも一般的になった今、雇用機会の創出もねらう。

「完成されたセールスフォースのデジタル人材育成プラットフォームを活用できることは、市にとって非常にありがたいことです。教育プログラムも豊富にありますし、アップデートが早いデジタル領域において、常に最新の情報による教育ができる点も大きな魅力です」

コロナ禍により、行政サービスや働き方をはじめ、社会のあらゆる場面でのデジタル化が進む今、時代の流れに対応したデジタル化だけでなく、未来を見据え、地域を挙げて時代が求めるIT人材の育成に注力する舞鶴市の取り組みに今後も注目したい。

 

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