廃棄物に付加価値を創出 農業を核に地域の活性化を目指す

かつて農作物生産に欠かせなかった鶏糞肥料。化学肥料の浸透で使用されなくなっていたが、近年、有機肥料として再び注目されつつある。"廃棄物"である鶏糞を有機肥料という"財産"に変え、農業を核にした持続可能な地域創生を構想する石橋の代表取締役 石橋隆二氏に話を聞いた。

石橋 隆二(いしばし・りゅうじ)
石橋 代表取締役
事業構想研究所 SDGs新事業プロジェクト研究 修了生

父から学んだ"もったいない"精神

2018年に〈SDGs未来都市〉に選定されるなど、先進的な取り組みで注目される富山市。石橋氏はこの地を拠点に、廃棄物処理、環境改善資材の製造販売、建物総合管理、福祉事業、農業など幅広く事業を展開する。

市との協業も積極的に行っており、指定管理者として運営を受託する市内の温泉施設の温泉熱を活用したエゴマ植物工場を富山市が創設した際、地元の製薬会社などとともに運営会社を設立。商品開発、搾油から販売までを含む一連の産業を立ち上げた。また近年はエゴマの安定供給を目的に、ネパールでの栽培と輸入も手がけ、現地の雇用創出にも貢献している。

こうした取り組みのなかでSDGsを知った石橋氏。「これから知っておかなければならないことで、しっかりと学びたい」との思いから、事業構想大学院大学が主催するSDGs新事業プロジェクト研究への参加を決めたという。

現在9つの企業を経営するが、すべての核にあるのは「"もったいない"の精神」と語る。

「事業の出発点である古紙回収業を創業した父とともに、幼い頃からごみ回収をしてきました。"なぜごみを集めるのか"との私の問いに"まだ使えるもの、もったいない"と答えた父の言葉が原点となっています」

鶏糞肥料の価値を高める

現在石橋氏が力を入れているのが、鶏糞の肥料化事業。国内では数万羽から数十万羽を飼養する養鶏場も多く、そこから排出される1日数トンにものぼる鶏糞の処理が課題となっている。鶏糞は植物の生育に欠かせないリンや窒素の含有量が多く、かつては優良な肥料として使用されていた。しかし、化学肥料浸透後は臭いや使い勝手の悪さから敬遠されており、多額の費用を投じて廃棄物として処理されるか、肥料化しても無料同然で頒布されるのが現状だ。一方で、国内で増えつつある有機栽培などを行う農家の間では、有機肥料が不足しているという。

これらを背景に、同社は主力製品のひとつである、スクリュー型コンポストプラント〈ラックス(RA-X)〉の活用を思いつく。この機器は、好気性高温発酵で有機性廃棄物を堆肥化するもの。「一般的な処理方法では熟成が中途半端になる鶏糞を"完熟"させる」ことで、悪臭を取りのぞくだけでなく、植物の生育不良を引き起こす地中での二次発酵も防ぐ、質の高い鶏糞肥料を生み出すことに成功した。

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