実地利用が始まったドローン 事例を企業が紹介

 

救急医療・災害対応無人機等自動支援システム活用推進協議会(EDAC)は、「地方自治体のドローン活用事例とその未来像について」を、2017年12月1日に東京・秋葉原で開催した。エンルート(埼玉県朝霞市)、ブイキューブロボティクス(東京都渋谷区)、KDDI、NTTドコモなど23社が登壇し、自治体でのドローンによるデータ収集や、その利用について紹介した。ドローンを飛ばすと、人間が立ち入り困難な場所でも画像データを取得できる。高所などでの危険な作業を減らしたり、災害に素早く対応する際に、この特性を利用している企業が多い。

 

日立システムズドローン・ロボティクス事業推進プロジェクトの宮河英充氏は、ドローンの運用統合管理サービスについて説明した。ドローンを飛ばすだけでなく、収集したデータの加工、管理まで一貫して行うこのサービスで、同社が注目しているのは、建築物などの劣化の診断だ。ドローンで撮影した建物表面の大量の画像データを3Dマッピングすると、ビル外壁の劣化している個所を安全に把握できるという。

 

また、損害保険ジャパン日本興亜 保険金サービス企画部の高橋良仁技術部長は、保険会社におけるドローン利用の急速な進化を紹介した。同社は、2014年に自動車事故現場の空撮による検証のためにドローンを導入したが、水害や火災、地震の被害の調査へと、利用の幅が瞬く間に広がった。わずか3年で、自治体が関連する調査だけでも、総フライト数は2000回を超えているという。ドローンによる空撮で調査が可能になったため、人間が現場に入れないような甚大な被害でも、素早く保険金を支払うことが可能になった。また、熊本地震の際には、行方不明者の探索や、震災被害のデジタルアーカイブ化にもドローンを使用している。

 

ドローン管制システムを紹介した楽天AirMap社は、2017年3月に楽天と米AirMap社の合弁企業として設立された企業だ。同社の陰山貴之事業開発部長は、同社の無人航空機管制(Unmanned Traffic Management、UTM)は、「ドローンの操縦者と、空域管理者をつなぐプラットフォーム」であると話した。このアプリを使うことで、ドローン操縦者は飛行可能な場所とフライトプランが、空域管理者はそこを飛行しているドローンの操縦者の情報などが取得できる。複数のドローンが都市上空を飛び交う状態になっても、安全に飛行できるようにすることを目的としている。このプラットフォームは現在、APIとしてドローン管理者やアプリ開発者への提供を開始している。

 

 2012年に中国DJI社のパートナーとなり、同社のドローンの販売を日本で初めて開始したセキド(東京都国立市)の大下貴之社長は、「当初は、ドローンに対する人々の目は冷たかった。多くの企業がドローンビジネスに参入している現状は感慨深い」と語った。同社は2017年3月に国立市と協定を結び、災害時のドローンの利用について協議を進めている。

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