南米リチウム資源開発に積極的な中国、環境対策への投資を約4兆ドル規模に拡大
(※本記事は『Global Voices』に2024年7月31日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)
南米ボリビア、チリ、アルゼンチンに広がる、生態学的な多様性に富む塩原地帯では、原始的な自然の美しさと人里の間で、繊細なバランスが長年保たれてきた。
しかし、近年の世界的なリチウム需要の高まりが、「リチウム・トライアングル」として知られる、このアンデスの湿地帯の風景を変貌させつつある。リチウムは電気自動車やバッテリーの動力源であり、国際的なグリーンエネルギーへの移行に不可欠な役割を果たしている。同時に「白い金」とも呼ばれるリチウムの採掘には、環境的および社会的に多大な影響が伴う。
世界のリチウム資源の約54%が埋蔵されている「リチウム・トライアングル」は、地球上で最も乾燥した場所の1つである。塩原からの抽出、リチウムの精製プロセスを含むこの地域の採掘作業では、膨大な量の水を消費する。そのため既存の水不足問題が悪化し、この脆弱な生態系に住む生物種やコミュニティが脅かされる可能性がある。
ボリビア、チリ、アルゼンチンの社会環境団体は2023年、国連気候変動会議(COP28)を前に、この生態系と水資源、生物多様性、そして生態系に依存する先住民や村落の生活様式の保護と保全を推進するため、同盟を結成した。
投資回収が不透明でもリチウム加工施設を南米に建設する中国企業
一方、世界的なリチウム需要の高まりを受けて、南米3か国はリチウム生産の工業化戦略を模索している。
電気自動車の最大生産国であり、リチウムの最大消費国である中国。これまでのところは、アンデス諸国と協力して、現地のリチウム加工施設の建設に積極的な姿勢を見せてきた。
2019年以降、国有企業の中国中信集団(Citic Guoan)や世界最大手の電気自動車用バッテリーメーカーである寧徳時代新能源科技(CATL)などの中国企業が、ボリビアのリチウム公社(YLB)と契約を締結。ボリビアにある世界最大級のリチウム埋蔵量を持つ地域で、炭酸リチウム製造のための工業施設を建設すると約束している。
ボリビアの法律では、ボリビアでのリチウム採掘はYLB社が行うか、YLB社がジョイントベンチャーで過半数の株式を保有する契約を結ばなければならない。この条件が、国際的な民間投資家が躊躇する要因となっており、中国はこの競争で一歩リードしている。
「たとえ利益の回収が遅くなっても、長期的な取り組みが必要だとしても、承知の上で複数の中国国有企業がこのチャレンジを進んで引き受けたのです。中国の投資家は忍耐強く、状況に応じて柔軟に対応してきました」と、ボストン大学グローバル中国イニシアチブの上級学術研究員であるレベッカ・レイ氏は語る。
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