四国の社会課題解決へ 自治体と連携して地域の発展を目指す
(※本記事は経済産業省近畿経済産業局が運営する「公式Note」に2024年10月10日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

合同会社こっからでは、スタートアップから大手企業までの人材開発や組織開発を行っている。また、2021年にNPO法人DAISを設立。四国のビジネスパーソンによる四国の社会課題解決を行う異業種混合型 CSR 研修を実施している。
近畿経済産業局公式noteマガジン「KEY PERSON PROFILE」、シリーズ「地域と価値とビジネスを巡る探求と深化」第13回は、合同会社こっからの代表社員、そして、NPO法人DAISの副理事長を務める巴山雄史さんです。四国経済産業局とのコラボ企画です。
取材日(場所):2024年2月(於:石鎚ふれあいの里(愛媛県西条市))
そんな巴山さんは常に「Playful」という概念を信条としている。
「Playful」とは「物事に夢中になって一生懸命楽しんで取り組む様」を表す言葉であり、様々な関わりを通じて、Playfulな大人やビジネスパーソンをどうやったら増やしていけるか、ということを巴山さんは考えている。

そんな信条のもとNPO法人DAISでは、四国全域をフィールドに企業や大学などから参加者を募り、自治体が直面しているリアルな社会課題の解決策を開発するプログラムを提供している。課題解決を通じて地域の発展に寄与すること、また、その体験そのものが参加者自身の糧となり、次世代リーダー人材を育成することを目的としているのである。
そんな活動を展開する巴山さんに、社会的な価値と利益とは何か、という問いを投げかけ、インタビューは始まった。
社会や地域の課題に関心を持つ人を増やすことが「社会的価値」に
合同会社こっからで行う事業が有する「社会的価値」とは、ビジネスパーソンなどの「大人」に対する「学びや発達の機会」そのものだと考えている。
また、NPO法人DAISが提供する「社会的価値」とは、「社会や地域に関心を持つ人間の母数を増やす」ことなのではないかと思う。プログラムの参加者には、家庭と職場だけが自分の世界と捉えている人が多い。そういった人たちが、何のきっかけもなしに、社会(外の世界)に意識や関心を向けるようになることは難しく、事実、大きな課題だ。
しかし、企業という「枠組み」と組み合わせることによる可能性も感じている。プログラムを「研修」という位置付けとして整理することで(意識や関心の有無を問わず)多くのビジネスパーソンの受け入れが可能だからだ。
プログラムを通じて社会(外の世界)に対して、自分たちで試行錯誤した解決策の提言を行うプロセスは、単に社会や地域を身近に感じられることに留まらず、当事者性の芽生えにもつながる。その状態をDAISでは「企業人」から「社会人」への変容と呼んでいる。
四国のように年間38,000人もの人口が減っている地域では、私たちだけが課題解決を試みるよりも、10人・100人という単位で関心を持つ人が増えることこそ意味があると感じている。
金銭的な利益は二の次
金銭的な利益の優先度は、私の中ではあまり高くない。一番の「利益」と感じるのは、「楽しいという実感」や、「レベルアップした」と思える手応えがあることだ。
DAIS自体も実は決して儲かっているというわけではなく、楽しさとやりがいで続けている部分はある。DAISでは、過去のプログラム参加者のうち、有志メンバーがその後運営側となって戻ってくるという循環が生まれているということが、その楽しさややりがいの片鱗ではないだろうか。
もちろん、参加者が運営側で戻ってくる理由は多様であるが、本人の自己実現や社会への関与、仲間づくりを目的としているケースが多いのではないかと思う。中には、会社の外で少し羽を伸ばして自分を試したいという人もいる。私たちとしては、どんなスタンスで参加いただいても構わないと思っているが、参加メンバーの中では金銭的な利益は二の次という暗黙の合意がそこにはあるように感じている。
実に様々なメンバーが流動的に参加し活動しているが、DAISらしい常にオープンでフラットな空気が変わらない。それは、(参加者が)所属する企業では当たり前のビジネス原理という慣習がないことや、肩書きや役職などに囚われないことで、のびのびと自分らしく振る舞えるからだと思う。
大きく儲かりはしないが補助金や助成金を当てにしない経営、ボランティア精神に頼らない運営というのも団体の一つの特徴である。解決したい課題を持つ自治体と、育成したい人材を持つ企業、レベルアップしたい(もしくはして良かったと結果的に感じる)参加者といった3者の欲求と能力をつなぎ、そのバランスを重視しながら持続可能な取り組みを心がけている。
課題解決のキーマンを見つけて理解する
パートナーシップを組む自治体を探すにあたっては、その関わり方が重要なポイントだ。
実際に運営してみると、規模が大きな自治体はリソースが豊富であるが故に、そもそも(自治体が直面しているリアルな社会課題という)ニーズがなかったり、(大きいが故に)組織が縦割りで話がスムーズにまとまらなかったりと感じることが多い。一方、規模が小さな自治体(町村レベル)では、課題が具体的かつ切実で、想いを持ったキーマンも見つけやすい。

DAISのプログラムを通じて巴山さんとタッグを組む方の声
DAISの研修で一部採択になった提案が、予算がついて「つるぎRPGプロジェクト」として進行中。DAISの人たちは、やるやらないって言ったらやる方を選ぶ人ばかりが集まってるっていう印象で、そういうところに自分が関わらせていただくと、自分の気持ちもそっちへ行く、チャレンジしようっていう気持ちにすごくなる。予想できなくても、何かやってみようかなっていう気持ちが強くなったと思う。
つるぎ町役場 交流促進課 課長補佐 三木 幸枝さん
そんな中で自治体とパートナーシップを組むにあたり重要なことは、「キーマンとなってくれそうな人が背負うリスクやコストを理解すること」である。お願いしたいことや一番大変な部分を共有したうえで「私たちとしてはここまでフォローできます」というコミュニケーションをしっかり取るように心がけている。
ビジネスパーソン同様、多くの行政の方たちも基本的には自分の仕事を増やしたくないという力学があるが、「それでもやらなければならない」と理解してくれる人との信頼関係を構築するようにしている。ニーズを見極めて人を見つけ、相手の困りごとにちゃんとアプローチすること。シンプルな話のように聞こえるが、案外これが重要なことなのだ。
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