組織再編とは? 代表的な手法やメリット・注意点についてわかりやすく解説

(※本記事は日本M&Aセンターが運営する「M&Aマガジン」に2025年7月4日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

企業が成長を目指す中で、経営体制や事業のあり方を大きく見直す「組織再編」は重要な選択肢の一つです。合併や会社分割、株式交換など、目的や状況に応じた多様な手法が用いられます。ただし、法的な手続きや実務上の注意点も多く、慎重な対応が欠かせません。本記事では、組織再編の代表的な手法やメリット、注意点をわかりやすく解説します。

組織再編とは?

組織再編とは、企業の組織や事業体制を大きく見直し、新たに編成し直すことをいいます。経営課題の解決や事業戦略の実現を目的に活用され、企業の成長や競争力強化を図る手段として広く行われています。

組織再編を実施するためには、会社法に基づくルールにのっとり、手続きを進めなければなりません。たとえば、会社法第748条以降では、「合併」「会社分割」「株式交換」「株式移転」などに関する手続きなどが詳細に規定されています。

また、令和元年の法改正では新たに「株式交付制度」が創設され、再編の選択肢がより柔軟になりました。

これらの法的ルールは、企業がスムーズに組織再編を進めるための指針となっており、実務においては会社法の条文だけでなく、関連する規則や法務省の通達なども確認をしなければなりません。そのため、組織再編を検討・実行する際には、最新の法令を十分に確認し、専門家の助言を受けながら慎重に進めることが重要となります。

組織再編を行う目的

組織再編を行う目的は、大きく分けて次の2つが挙げられます。

事業の拡大・縮小による成長力の強化

組織再編は、自社の成長を目指して他社の事業や経営権を取得したり、不採算となった事業から撤退したりする際に活用されます。こうした取り組みは、自社単独だけでなく、グループ全体の事業運営を見直す目的で実施されることもあります。

また、組織再編はグループ内で完結する場合もあれば、外部の企業と連携して行われるケースもあります。いずれにしても、事業の拡大や縮小を通じて、経営資源を最適に配分し、成長力を高めていくことが目的となります。

最近では、デジタルトランスフォーメーション(DX)への対応やサステナビリティ経営の実現に向け、事業ポートフォリオを見直す一環として組織再編が行われるケースも増えています。また、不採算事業の整理やカーブアウトにより、成長分野へ経営資源を集中させる動きなども活発化しています。

グループ企業管理の効率化

事業の拡大に伴いグループ会社の数が増えると、管理にかかるコストや手間も大きくなります。そこで、組織再編を通じて重複する業務や事業を整理・統合することで、グループ全体の管理負担を軽減し、効率的な運営が可能になります。

ただし、効率化を重視するあまり、本来必要な業務や事業まで削減してしまわないよう、検討する際には慎重に判断しなければなりません。

組織再編と組織変更との違い

組織再編は、他の経営戦略と目的や手法が似ているように見えることがありますが、実際には異なる側面を持っています。混同しやすい概念との違いを正しく整理し、理解を深めておくことが重要です。

組織変更は、社内の役職名の変更や部署の再編成といった、内部的で形式的な変更を指します。

一方、組織再編は会社法に基づく法的な再構成であり、法人格の変更や統合を伴うケースも多くみられます。そのため、単なる組織体制の見直しとは異なり、登記の変更や契約内容の修正が必要になる場合も少なくありません。

また、法的・会計的な処理が伴うことから、手続きはより複雑になる傾向にあります。そのため、組織変更とはその目的や影響する範囲、必要となる手続きなどの面でも大きな違いがあります。

組織再編と事業再編との違い

事業再編とは、特定の事業単位に焦点を当て、売却、廃止、統合などを通じて構造を変える取り組みのことです。

事業再編に関しては法律上の定義はありませんが、経営戦略として広く認知されています。具体的には、収益性の低い事業を切り離し他社に譲渡したり、成長分野をスピンオフして法人化したりするケースなどが、事業再編となります。

これに対し組織再編は、企業全体の法人格や資本構成を変更するものです。また、会社法において、会社分割、株式交換、株式移転などの具体的な手法が規定されています。企業グループの管理体制を再構築し、資本構造を最適化することを目的としており、例えば持株会社制へ移行したり、親会社が子会社を吸収合併したりするケースが組織再編となります。

組織再編の主な手法

主な組織再編の手法として、合併・会社分割・株式交換・株式移転・株式交付について特徴をご紹介します。

吸収合併

吸収合併とは、一つの会社がもう一つの会社を取り込む組織再編の手法です。合併される側の会社は消滅し、全ての権利や義務を合併する側が引き継ぎます。

主に、グループ会社の整理や重複する業務の統合など、経営の効率化などを目的に行われます。

ただし、実施する際には、株主総会での承認や官報による公告、被合併会社の債権者保護のための手続きが必要な点に注意しなければなりません。

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