東大農学部と八ヶ岳農業大学校が連携協定 データ駆動で稼げる農業へ

東京大学大学院農学生命科学研究科と八ヶ岳農業大学校(長野県諏訪郡原村)は2026年4月8日、日本農業の発展と次世代を担う農業者の育成を目的とした連携協定を締結した。両者は23日に都内で説明会を開き、「テクノロジー」「サイエンス」「マーケティング」を基軸とするデータ駆動型農業の実証と、次代を担う農業人材の育成に共同で取り組む方針を明らかにした。

東京大学大学院農学生命科学研究科教授の岩田洋佳氏(左)と八ヶ岳農業大学校校長の丸山侑佑氏

協定の背景には、気候変動、資材価格の高騰、サプライチェーンの変化に加え、農業従事者の急減という構造的課題がある。八ヶ岳農業大学校の丸山侑佑校長は説明会で「このままでは15年後に農業従事者は半減しかねない。農業高校卒業生の就農率はわずか3%で、農業が若者にとって魅力ある産業になっていないのが現状」と強い危機感を示した。

1938年開校の八ヶ岳農業大学校は、東京ドーム60倍超にあたる267ヘクタールの広大な敷地を有し、畑作、花き、酪農、養鶏など実践的な農業教育を展開している。2025年4月、上場IT企業で経営に携わってきた丸山氏が校長に就任し、ICTを活用した営農を模索してきた。これまでに、生成AIを用いた栽培マニュアル作成や、安価な温湿度センサーと気象データを組み合わせた作業指示システムを開発。データに基づき湿度を調整するイチゴ栽培では、一般的な農家と比較して農薬散布量を約10分の1に抑える成果も出ているという。

東京大学では、生物測定学を専門とする岩田洋佳教授が統計遺伝学・データ科学・フェノミクスを融合させたデータ駆動型農業・品種改良の研究を牽引してきた。研究における課題は、実際に作物が栽培されている農地での実証の機会が限られていることだったという。岩田氏は「研究成果を社会実装するには、生産現場に近い環境での実証が不可欠。八ヶ岳農業大学校の実践の場と学術的知見を結びつけ、研究と教育を一体的に発展させたい」と語った。

今後実施する具体的な連携として、バレイショ栽培のスマート化に関する共同研究、東大生を対象とした全学体験ゼミナールの八ヶ岳での開催、丸山氏を講師とする農業アントレプレナーシップに関する講演・サロンなどが含まれる。

東大農学生命科学研究科の東原和成研究科長は「現場に足を運んで課題を体で受け止め、心と情熱を持つ人材を育てたい」とコメント。丸山氏は「東大の学術的知見と優秀な学生の柔軟な発想を実践の場に活かし、未経験でも収益を上げられる仕組みを構築する。自らの手で農業を変えていく、若き農業従事者やアントレプレナーを数多く輩出したい」と意気込みを語った。