AI生成コードの普及が招く「エンジニアの負担増」の実態
株式会社キッカケクリエイションが実施した調査により、AIを活用したコーディングの普及が、現場のコードレビュー担当者に深刻な負担をもたらしている現状が明らかになった。業務でコードレビューを担当するITエンジニア322名を対象とした本調査では、レビュー担当者の86.3%が負担の増加を実感しており、生成されたコードの品質管理が組織の新たな課題となっている。
レビュー負担の深刻化と「理解不能」なコードの増加
直近6か月以内にAI生成コードを複数回(2回以上)レビューした経験を持つエンジニアは80.4%に達しており、AIツールはすでに開発現場へ深く浸透している。しかし、その副作用としてレビュアーの負担は増大しており、30.0%が「非常にそう感じる」、56.3%が「ややそう感じる」と回答した。
株式会社キッカケクリエイション公式プレスリリースより
具体的な問題点として最も多く挙げられたのは「提出者本人がコードの内容を説明できなかった」の49.5%である。AIが生成したコードをそのまま提出し、ロジックを把握していないケースが頻発している。次いで「動作するが、なぜ動くのか理解しにくいコードだった」が33.6%、「エッジケースで正常に動作しないコードだった」が31.8%と続き、保守性や堅牢性の欠如が指摘されている。
「書く速度」と「届ける速度」に生じる乖離
AIの導入により、一見すると開発効率は向上しているように見える。しかし、回答者の74.8%が「コードを書く速度は上がったが、動くソフトウェアを届ける速度はあまり変わらない」と回答した。これは、AIが大量のコードを短時間で出力する一方で、その修正やレビューに多大な時間を要しているためである。
実際に、AI生成コードのレビューや修正のために週3時間以上の追加対応が発生しているエンジニアは67.5%(約7割)に達している。さらに、78.6%のエンジニアが直近半年以内にAI生成コード起因のバグや障害修正を経験しており、AIが「負債」を積み上げている側面も否定できない。
組織的なルール整備と今後の課題
AI生成コードの増加に対し、組織側の対応は遅れている。AI活用に関する「明文化されたルール・ガイドラインがある」と回答した組織は27.3%にとどまり、43.5%は「暗黙のルールや口頭での取り決め」で運用されているのが実情である。このまま無秩序にAI生成コードが増え続ければ、コードベース全体の品質維持が困難になると懸念する声は76.4%に及ぶ。
今後、AI時代のレビュアーには、単なるコード修正能力だけでなく「品質基準を言語化してAIに指示する力」や「AIが生成したコードの意図を読み解く力」が強く求められる。AIによる自動化が進むからこそ、人間側が品質をコントロールするための本質的なスキルを磨く必要性が、かつてないほど高まっている。