タイで期待される未来の水産養殖システム「多栄養段階統合養殖(IMTA)」
(※本記事は『reasons to be cheerful』に2024年4月22日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

持続可能で統合的なアプローチの養殖が、中国などの地域で広がりをみせている。次はタイかもしれない。
タイの養殖業者は昔から複合養殖だった
ソンポーン・カイカオ氏は、バンコクから約40マイル(約65キロ)西、ナコーンパトム県にあるプラパパン農場の所有者だ。彼は約16万平米の土地で、ティラピアとバナメイエビを養殖している。
ソンポーン氏のピックアップトラックの荷台に乗せてもらい、養殖池を区切るほこりっぽい道を走る。養殖池はきれいに区画されており、害鳥を撃退する罠や案山子、水を循環させる垢抜けた浄化装置も設置されている。
タイには単一種の養殖池が何千もあるが、齢60歳になるソンポーン氏は、もう30年近くにわたって複合養殖を実践してきた。複数種を組み合わせて養殖するのは面倒ではないかと尋ねると、「この方法しか知らないからね」と答えた。

ソンポーン・カイカオ氏(右)は30年にわたり複合養殖を実践してきた。copyright:Tommy Walker
「30年前からこの方法で養殖しているが、最初から複数種を組み合わせてきた。別の事業者がそうしているのを見て真似をしたんだ。うまくいっているようだったから」
タイでは、魚とバナメイエビを組み合わせて養殖することが複合養殖の一般的な手法だ。これはタイの養殖業や漁業にとって、今後数年で持続可能性に関する大きな変化をもたらすきっかけになるかもしれない。
それが、水産養殖の専門家たちの願いだ。彼らはタイの養殖業者に対し、海産物を同じシステム内で養殖する、より持続可能なモデルへの転換を説得しようとしている。それは「統合的多段階養殖(IMTA)」と呼ばれる、すでにタイの一部の養殖場や世界中で実践されているシステムだ。IMTAでは、異なる栄養レベル(異なる食物連鎖の段階)にある複数の生物種が組み合わされ、廃棄物が減り、成長効率が高まる。この持続可能性と効率性の組み合わせは、単一種の養殖よりも環境に優しく、収益性も高い。
単一種の養殖よりも複合養殖、複合養殖よりもIMTAの方がメリットが多い
プラパパン農場で、私たちはソンポーン氏の従業員の一人が網を投げ入れ、ティラピアを2匹捕獲しているところに出くわした。数メートル離れた別の池はバナメイエビでいっぱいだった。
続きは無料会員登録後、ログインしてご覧いただけます。
-
記事本文残り77%
月刊「事業構想」購読会員登録で
全てご覧いただくことができます。
今すぐ無料トライアルに登録しよう!
初月無料トライアル!
- 雑誌「月刊事業構想」を送料無料でお届け
- バックナンバー含む、オリジナル記事9,000本以上が読み放題
- フォーラム・セミナーなどイベントに優先的にご招待
※無料体験後は自動的に有料購読に移行します。無料期間内に解約しても解約金は発生しません。