アクセルスペース、JAXAの宇宙戦略基金に採択 衛星・旅客機連携でCO2発生源別モニタリングへ
株式会社アクセルスペースは、明星電気株式会社、ANAホールディングス株式会社、株式会社JIJとの4社連名で、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙戦略基金における技術開発テーマ「次世代地球観測衛星に向けた観測機能高度化技術」に採択された。技術開発課題名は「衛星編隊・旅客機観測によるCO2発生源別排出量・吸収モニタ」で、代表機関をアクセルスペースが務める。
温室効果ガスの削減には、どの発生源からどれだけのCO2が排出・吸収されているかを正確に把握することが不可欠だが、現在の観測手法はごく一部の地域・排出源にとどまっている。こうした発生源別・時刻別の観測を実現するうえで鍵となるのが、分光器の小型化・低コスト化だ。
分光器は、大気中の成分が特定波長の光を吸収する性質を利用してガス濃度を測定する装置だが、従来の政府衛星向け機器は高精度である一方で大型かつ高価なため、コンステレーション規模での展開には課題があった。4社は最新の国産検出器技術を活用し、衛星・航空機・地上観測で共通して使用できる小型センサを新たに開発する。このセンサを衛星コンステレーション・定期旅客便・地上センサと組み合わせることで、大都市圏を中心に朝・昼・夕の多地点同時観測を可能にし、時刻別・発生源別のCO2排出・吸収データの取得を目指す。まず航空機による観測実験を重ね、2030年度から2032年度を目処に実証衛星を打ち上げ、軌道上での観測データ取得を計画している。
アクセルスペースが代表機関として全体統括とセンサのインテグレーション・衛星開発を担い、明星電気が「はやぶさ2」などJAXAプロジェクトで培った技術を活かしたセンサ実証機の開発を担当する。ANAホールディングスは自社航空路線網を活用した炭素収支解析の検証と、センサの軌道上実証前に航空機内での地上検証の場を提供する。JIJは数理最適化・量子技術によるCO2排出測定アルゴリズムの開発と、発生源別排出量推定処理の最適化を担う。さらに香川大学、株式会社三菱UFJ銀行、東京海上日動火災保険株式会社、米国のUniversities Space Research Association(USRA)とも協力して推進する。
二酸化炭素(CO2)排出削減やネットゼロに向けた取組や技術開発が世界的に加速する一方、「グリーンウォッシュ(実態が伴わないのに環境に配慮しているように装う「見せかけの環境対策」)」への批判も高まりつつある中で、排出源別・時刻別のCO2データを客観的かつ継続的に提供できるインフラの整備は、カーボンクレジット市場の信頼性向上と国際的な削減評価指標の標準化の観点からも重要な意味を持つ。日本が先行して築いてきた温室効果ガス衛星観測の知見を民間主導で発展させ、宇宙・航空・量子技術を組み合わせた新たな観測基盤として、気候変動対策の実効性を支えるデータ環境の確立が期待される。