スポーツ庁・JAXA「スポーツ×宇宙」の連携に向けた検討委員会 記者発表会・パネルディスカッション開催
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)とスポーツ庁は2026年3月24日、「スポーツ×宇宙 新たなフロンティア検討委員会 発表会&パネルディスカッション」を東京・日本橋で開催した。2025年2月に両者が締結した連携協定に基づき発足した検討委員会の議論をとりまとめ、関係者・メディアに向けて発表するとともに、スポーツと宇宙の融合がもたらすビジネス・イノベーションの可能性を幅広く議論した。
連携協定締結から検討委員会の発足へ
両者の連携は、元スポーツ庁長官で現・東京科学大学副学長の室伏広治氏の発案を端緒とし、2025年2月19日に正式な連携協定が結ばれた。その後、同年6月より早稲田大学スポーツ科学学術院教授の金岡恒治氏を座長とする13名の委員からなる検討委員会が4回にわたって開催され、スポーツと宇宙の両分野が共有できる知見と課題について議論が重ねられた。
取りまとめた5つの提言テーマ
当日は金岡氏が委員会の成果を発表。トップアスリートと宇宙飛行士に共通するのは「厳しい環境下で精神的・肉体的負担を受けながら最適な解決策を導き、高いパフォーマンスを発揮する能力」という共通ビジョンが確認されたとし、①トップアスリートと宇宙飛行士の一体的な強化に資するトレーニングの検討・実証、②人の能力拡張(重力感覚・一器多様研究)、③環境適応(生き残る力/生きる楽しみを拡げる)、④宇宙スポーツ(生きる楽しみの拡張/公開・参加型)、⑤宇宙での創造性発揮と地上でのライフパフォーマンス向上——の5テーマを提言として示した。室伏氏はじめ13名の委員が各自の立場から今後の期待を述べ、JAXA・日本スポーツ振興センター・各大学研究者・リハビリテーション専門医など多様な主体が一堂に会した。
パネルディスカッション① 宇宙とスポーツが出会うとき、ビジネスがどう創出されるのか―センシングと先端技術が拓く新たな産業の展開
東京科学大学地球生命研究所長・教授の関根康人氏がファシリテーターとなり、株式会社ORPHE代表取締役社長の菊川裕也氏、ミツフジ株式会社代表取締役社長の三寺歩氏ら登壇者が、センシング技術とウェアラブルデバイスがスポーツ・医療・宇宙の各領域でどう応用されるかを議論した。スマートシューズによる歩行解析やAIコーチング、導電性繊維を用いた生体モニタリングなど各社の取り組みが紹介され、宇宙飛行士の帰還後の身体回復支援や地上の健康管理への応用可能性が共有された。異分野の技術を掛け合わせることの難しさと可能性、アカデミアと企業の連携における課題も率直に語られた。
パネルディスカッション② 極限環境で「直観」はどのように発揮されるのか―トップアスリート・宇宙飛行士に学ぶ
登壇者は、筑波大学産業精神医学宇宙医学グループ名誉教授・松崎一葉氏、宇宙飛行士・山崎直子氏、山岳家・辰野勇氏(モンベル創業者)、ブレイクダンサー・TAKUMI氏、視覚障害パラリンピアン・木村敬一選手(水泳)。ファシリテーターは独立行政法人日本スポーツ振興センター理事・ハイパフォーマンススポーツセンター長の久木留毅氏。松崎氏が脳科学の知見をもとに直観のメカニズムを解説し、各登壇者がそれぞれの経験をもとに議論した。「直観は先天的な能力ではなく、経験の蓄積によって磨かれるものだ」という認識が共有され、想定外の事態への対応や瞬時の判断に直観がどう働くかが具体的に語られた。AIが論理的処理を代替する時代において、人間固有の直観的能力を育む教育や環境づくりの重要性も議論された。
スポーツと宇宙という異なる極限領域に共通する人間の身体・精神能力を科学的に解明し、それを広く社会に還元するこの試みは、ハイパフォーマンスの知見を健康長寿や労働生産性の向上に活かす新しいアプローチとして期待される。