オープンファクトリーで技術をアピール 商品開発や技術力向上にも寄与

(※本記事は経済産業省近畿経済産業局が運営する「公式Note」に2024年10月23日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

株式会社河辺商会社長の福田康一さん

もともとはクローズだった工場

株式会社河辺商会は、プラスチック成形加工製品の生産と技術開発を得意としており、塗装が不要なほど美しい仕上がりの成形(無塗装成形)や、色や素材が異なる複数の素材を一体化させて成形する技術(多色一体成形)などの高い技術を有しています。

社長の福田康一さんは、大阪府の堺市や八尾市、門真市等の地域で開催されているFactorISM (ファクトリズム)の南エリア支部長を担っており、ものづくりの工程や社員たちの頑張っている姿を発信しています。

福田康一さんの写真
インタビューに協力いただいた社長の福田康一さん

オープンファクトリーを始めるまでは、一般の方向けに工場を公開していなかった同社。

工場に外部の人が入る機会は少なく、あったとしても取引先企業の訪問しかなかったそうです。

そのため、社員たちも社外の人が工場に入ることに慣れておらず、クローズな雰囲気がただよっていました。

そんな状況を打破し、社員たちが頑張っている姿を社外の人たちに見て欲しいという想いや所属部署の垣根を越えたコミュニケーションをより活発化させたいという想いから、2020年からFactorISMに参加しました。

親子で楽しめるオープンファクトリーに

2020年はコロナ禍だったこともあり来場者が芳しくなく、社員の士気も上がらなかったという福田さん。

そこで集客の課題について、堺商工会議所に相談し、堺市内の校長先生が集まる校長会にて、各小学校の全校生徒にオープンファクトリーのチラシを配布してもらうことになりました。

この取組が奏功し、親子連れの来場者が増え、子供たちが楽しんでいる様子を親が写真に収める光景が多く見られるようになりました。また、「大人の社会見学」として大人にも好評を得ています。

オープンファクトリーの様子
オープンファクトリーの様子

オープンファクトリーの回数を重ねるごとに、工場への来訪者が増えていき、社外の人が来ることに社員たちも慣れていきました。

「今では社員各々が自主的に、どうやったらお客さんに楽しんでもらえるか等について考え、意見を出してくれるようになりました」と福田さんは嬉しそうに語ってくださいました。

若手が活躍して育つ

オープンファクトリーの運営は入社2、3年目の若手社員を中心に、所属部署が異なる社員同士が協力して行っており、既存の枠にとらわれないコミュニケーションが生まれています。

また、お客さんに説明する際、会社を代表して語る必要があることから、他部署の業務についても学ぶ機会になっています。

オープンファクトリーの様子

「オープンファクトリーのワークショップのアイデア出しの場面において、若手社員達は良い意味で会社に染まっていないので、初めてのことへの一歩の踏み出し方がスムーズです。」

「会社に長くいればいるほど、経験から『できること』と『できないこと』をすぐに結論づけてしまいがちですが、若手職員からは経験や固定観念に縛られないいろんなアイデアが出てくるんですよ」
と福田さん。

このように社内の交流が活発になり、通常の業務とは異なる場での活躍が増えたことで、社員が新たな一面や強みを発揮し、それが商品開発や技術力向上に繋がっています。

河辺商会の技術が詰まった「CHOPLATE」

同社では自社製品として、「まな板になるお皿“CHOPLATE(チョップレート)”」を開発し、2021年から販売しています。

この製品は、まな板として食材を切ることはもちろん、まな板をそのままお皿にして食卓に出すこともできる製品です。

割れにくく軽量な素材で日常使いしやすく、マットな質感と独特な木目のような模様が好評を得て、発売から3年で累計販売数16万枚を超えるヒット商品になっています。

お皿の上で食材が切られている写真
まな板になるお皿“CHOPLATE”

シンプルで洗練されたデザインを保ちながら、ユーザーにとって嬉しい強度や機能性を実現しているのは、同社がこれまでに自動車や家電などの精密部品の製造で培ってきた高いプラスチック成型加工技術の賜物です。

この製品の認知度が上がるにつれ、「CHOPLATEの製造場所を見てみたい」と来場者層にも変化があったと言います。

CHOPLATEを入り口・軸にオープンファクトリーを実施できることで、プラスチックにガラス繊維を混ぜ込んで強度を増す、表面にシワ模様を付けて汚れが付きにくくするといった、同社の技術の高さを十二分に伝えることができるというシナジーが生まれています。

絵付け体験の様子
CHOPLATEへの絵付け体験の様子

社員たちの頑張っている姿を見て欲しい

最後に、オープンファクトリーにかける想いを福田さんに伺いました。

福田さんが話している様子
「オープンファクトリーでは何より、これらの技術を有している社員たちの姿をお客さんに見ていただきたいです。」
「社員たちは、顧客のいかなる要望もかなえる技術と発想力を持っていると信じています。実際に工場で頑張っている姿を多くの人に見ていただくことで、社員たちが自身の仕事に誇りを持ち、お客さんからの信頼と信用の獲得につながる。オープンファクトリーは、そのような機会を作ることができる良い取組だと思っています。」
「今後もオープンファクトリーを含めて、自社製品の背景や用いられている技術を語る場を増やしていき、世界に誇るカワベの技術をどんどんアピールしていきたいです。」

今は子ども寄りのワークショップが多いので、大人向けのものを用意して、これまで来られていなかった年齢層の方にも楽しんでいただけるようにしていきたい、と今後の展望も語ってくださった福田さん。

世界に誇るカワベの技術から次にどんな新しいものが生まれるのか、期待が高まります。

元記事へのリンクはこちら

近畿経済産業局 公式note