東海クラリオン 多良間島で住民が自動運転カートを運行、1年で1万1000km走行
車載器専門商社の東海クラリオン(名古屋市)は、離島や過疎地域の「交通空白」の解消に向け、住民が主体となって維持・運営できる地域交通の必要性を2026年10月14日に提言した。同社は2025年8月から沖縄県多良間島で、住民がドライバーを務める自動運転カートの実証実験を続けており、走行距離は1年で1万1000kmを超えた。代表取締役の安部源太郎氏は「地域交通を支えているのは乗り物ではなく人」と述べ、住民が無理なく関わり続けられる仕組みづくりの重要性を強調した。
沖縄県多良間島で自動運転カートのドライバーを務める住民(出典:東海クラリオン)
多良間島での実証実験では、40代から70代以上までの住民5人がドライバーを務め、2台の自動運転カートを運行している。走行距離は2026年8月時点で1万1000kmを超えた。島にはタクシーがなく、住民は徒歩や自家用車、住民同士の送迎で日常の移動を確保している。同社は、こうした助け合いによる移動は公共交通の縮小や高齢化が進む全国の地域に共通するとして、多良間島での取り組みを今後の地域交通のあり方を探る試みと位置づける。
実験に使われているのは、同社が開発する後付け型の自動運転システム「YADOCAR-i(ヤドカリ)ドライブ」(月刊事業構想2024年5月号参照)だ。既存車両に後付けでき、走行場所や速度を限定することで、誰もが扱いやすいシステムを目指した。位置情報の把握には準天頂衛星システム「みちびき」を活用し、一般的な自動運転車両と比べて低コストで導入できるという。
安部氏は「交通空白の問題は、バスやタクシーがなくなることだけではない」と語る。本当に深刻なのは、人と人との助け合いに支えられてきた暮らしが維持しにくくなっていることであり、高齢化と人口減少が進むなかで、その文化だけに頼り続けるのは難しいという。そのうえで「必要なのは新しい技術そのものではなく、住民が無理なく関わり続けられる仕組み」と述べ、多良間島での実験を、日本の地域が将来も移動を続けるための取り組みとして進めていく考えを示した。
人口減少と高齢化により公共交通の維持が難しくなるなか、移動手段を確保できない交通空白は全国的な社会課題となっている。国土交通省は地域の輸送資源の活用や共同化を進めて制度整備に取り組んでおり、10月16日には交通空白の解消などを目的とした改正地域公共交通活性化再生法が施行される。離島や過疎地域では、家族や近隣住民による送迎といった助け合いが移動を支えてきたが、高齢化と人口減少で担い手は減りつつある。これにより人との交流や地域活動への参加機会も失われ、暮らしの基盤そのものが弱まると危惧されている。