H2L、素手の作業から力加減を学ぶ国産フィジカルAI「BodySharing® Physical AI」発表

H2L株式会社は、人の姿勢や動き、力加減といった固有感覚のデータを学習し、ロボットを自律制御する国産フィジカルAI「BodySharing® Physical AI」を発表した。人が素手で作業する様子を学習データとして取り込み、そこからロボットの動作と力加減を含む制御信号を生成する仕組みで、生成した信号によってロボットを自律的に動かす。同社は、人の能力を引き出す支援ツールやAIの研究開発、身体の動作を伝えて体験を共有するサービスなどを手がけている。

開発の背景には、ロボットが日常の作業を担うには、物を動かす手順に加えて、対象に応じた力加減を学ぶ必要があるという課題意識がある。同社は2012年の創業以来、固有感覚(姿勢や動きなどの動作、重さや抵抗などの力加減)のデジタル化に取り組み、2018年には筋変位センサを搭載したデバイス「FirstVR」の国内販売を開始するなど、身体情報の取得と分析に関する技術を蓄積してきた。作業者の動作と力加減をデータ化することで、日本の産業現場に蓄積された熟練技能の継承と作業の自動化に活用する狙いだ。

技術的な特徴は、独自の光学式筋変位センサによって筋肉の膨らみを光学的に読み取り、その変化から素手で作業する際の力加減を推定する点にある。姿勢や動作は別途取得したデータを併用し、力加減と組み合わせて学習に用いる。筋電図などと異なり電気的なノイズや水によるノイズに強く、水場でのデータ取得にも対応するという。同社は、素手の日常作業の動作と力加減(固有感覚)を学習するフィジカルAIとしては世界初としている。こうした固有感覚のデータを少量のトークンとして学習し、そこからロボットの制御信号を生成する。利用時は筋変位センサデバイス「FirstVR」を腕に巻き、スマートフォンかパソコンのカメラを設置して専用アプリを起動するだけで学習が始まる、手軽さを掲げている。

実証は、双腕ロボット「Sciurus17」を用いて、キューブとタオルの運搬・整理作業で評価した。人が素手で実演したデータをもとに約5,200万パラメータの制御モデルを学習させ、3名が各5分(計15分)実演した条件では成功率95%、11名が各1分を2回(計22分)実演した条件では99%という結果が得られた(いずれも100回の試行)。ただし同社は、条件ごとに参加者の構成や実演方法が異なるため、時間だけで単純に比較できるものではなく、別の作業や環境で同じ結果を保証するものでもないと注記している。実証済みの機種は「xArm7」と「Sciurus17」で、今後は6自由度以上でグリッパを備えた単腕・双腕ロボットへ順次対応を広げる予定。ブラウザ上で使えるシミュレータも準備中としている。導入相談では、データの取得から専用フィジカルAIの構築、ロボットへの接続までを対象とする。

想定する活用分野として、同社は製造現場の熟練技能の継承、物流や小売のバックヤード作業、家庭内の片付け支援などを挙げている。ロボット制御に加え、スポーツや製造などの技能継承にも体験データを活用するとしている。少量の実演データからロボットが作業を学習できれば、人手不足や技能継承といった現場の課題に対する選択肢の一つとなりうる。さらに将来は、固有感覚のデータを基盤にした大規模感覚モデル「LSM(Large Sensation Model)」の構築を目指すとしている。

※本稿の「国産」は、H2Lが国内で研究開発してきた固有感覚技術を基盤とするデータとフィジカルAIであることを指し、ロボット機体や構成部品の原産国を示すものではない。