株式会社1129の経産牛ステーキが売れる理由 売上5倍の裏側に迫る
(※本記事は「協働日本」に2025年4月16日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

協働日本で生まれた協働事例を紹介する記事コラム「STORY」。
協働日本は、鹿児島県および鹿児島産業支援センターの令和6年度の「新産業創出ネットワーク事業」を受託しており、取り組み企業数社をお招きし、報告会を行いました。
当日は取り組み企業の一社、株式会社1129の代表取締役・大隣 佳太氏にお越しいただき、協働の取り組みと成果を発表いただきました。
株式会社1129は、鹿児島県鹿児島市を拠点に、業務用食肉の卸売からスタートし、現在は自社ブランドによる精肉販売・商品開発、外食・ECなど、多岐にわたる事業を展開する企業です。
中でも注力しているのが、これまで市場価値が低く見られてきた「経産牛」の再評価。
その豊かな味わいを活かしながら、ブランド化と販路拡大に挑戦しています。
今回は事前インタビューでお伺いした内容を含め、大隣氏にお話しいただいた協働日本との取り組みを通じて生まれた変化や、今後の事業展望への想いなどをご紹介します。協働プロジェクトを通じて、大隣氏がどのような変化と成果を得たのか、未来への展望とともに伺いました。
(取材・文=郡司弘明・山根好子)

経産牛の価値を広めたい──その想いから始まったチャレンジ
——協働日本と取り組むことになった背景とプロジェクトについて
大隣佳太氏(以下、大隣): よろしくお願いします。まずは弊社のご紹介をさせていただきたいと思います。私の実家は祖父の代から続く畜産農家で、幼い頃から牛と共にある生活が当たり前でした。しかし、父の代で廃業してしまったことが、今でも自分の中に“悔しさ”として残っています。そういった原体験があるからこそ「牛に関わる仕事がしたい」という思いをずっと持ち続けており、ずっと畜産の繁殖生理学を専門に勉強し、2019年の12月24日に会社として設立しました。黒毛和牛をもっと価値あるものにしていくという理念を掲げ、2020年の2月9日から通信販売のみという事業形態で黒毛和牛の販売をスタートしました。
楽天、Amazon、Yahoo!などの大手ECサイトでの食肉の販売やふるさと納税を取り扱っていく中で課題として強く感じていたのが一頭買いした肉をいかに効率よく使えるかということでした。サーロインやヒレなど、いわゆる「いい肉」というイメージのある人気部位は通販でも人気で、在庫はほぼはけてしまいます。一方、他の部位は冷凍庫がパンパンになる程余ってしまうこともありました。そこで、余った部位にうまく付加価値をつけて販売し、売り切っていくことで牛一頭あたりの単価を上げられるのではないかと模索していました。
これまでは和牛の価値は「サシ=霜降り」の多さで評価されてきました。しかし、近年では赤身肉も注目されるようになってきています。
繁殖を終えた経産牛は、等級こそ高くないものの脂に頼らずしっかりとした旨みがあります。赤身肉の本当の良さを知ることのないまま「霜降り肉」ばかりが「いい肉」として評価されてしまう、その評価軸をひっくり返してみたいという思いが強くなりました。
そのためにどれだけアイディアがあっても、それを具現化するためのBtoCのマーケティングや商品設計の知識、スケジューリングなどは経験も浅く実行に移すのが容易でない……そんな時に出会ったのが協働日本でした。「一緒に考え、一緒に悩んでくれる伴走者」というスタンスにも魅力を感じ、アイディアの実現に向けてお力をお借りすることになりました。

“厚切りステーキ”と“販促計画”から始まった、伴走支援の中身
——実際に協働プロジェクトがスタートしてから進んだ取り組みについて
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