政府 21.3兆円の総合経済対策、AI、造船などへ投資

政府は2025年11月21日、臨時閣議を開き「『強い経済』を実現する総合経済対策~日本と日本人の底力で不安を希望に変える~」を閣議決定した。国費ベースで21.3兆円、民間資金を含む事業規模は約42.8兆円にのぼる。裏付けとなる2025年度補正予算の一般会計歳出は17.7兆円程度で、コロナ禍以降で最大規模となる。

経済対策は3本の柱で構成した。国費ベースでは、第1の柱「生活の安全保障・物価高への対応」に11.7兆円、第2の柱「危機管理投資・成長投資による強い経済の実現」に7.2兆円、第3の柱「防衛力と外交力の強化」に1.7兆円を計上。このほか予備費7000億円を確保した。

新規事業やイノベーションの創出につながる、危機管理投資・成長投資は17の戦略分野で推進。官民連携による大規模投資を実現する方針を示した。AI・半導体分野では、AI法に基づく研究開発・社会実装の推進、AIセーフティ・インスティテュートの強化に取り組む。半導体については「AI・半導体産業基盤強化フレーム」に基づき、先端・次世代半導体の量産に向けた技術開発や設備投資を支援する。造船分野では「造船業再生ロードマップ」を策定し、官民で1兆円規模の投資を実現させる。造船業再生基金の創設、AI造船ロボットの研究開発、経済安全保障推進法の特定重要物資への「船体」の指定などを進める。宇宙分野では「宇宙戦略基金」(10年で総額1兆円規模)を活用し、2030年代早期に宇宙産業の市場規模を8兆円に拡大する。また食料安全保障では、農地の大区画化、共同利用施設の再編集約、スマート農業技術の導入などに取り組み、2030年の農林水産物・食品輸出額5兆円の目標達成を目指す。

物価高対策としては、エネルギーコストの負担軽減、約2兆円の重点支援地方交付金に、子育て世帯への支援などを挙げている。医療・介護・障害福祉分野では、2026年度報酬改定の効果を前倒しし、現場で働く幅広い職種の賃上げを支援する。同時に、ICT機器の導入による生産性向上・職場環境改善の取り組みも後押しする。医師偏在の是正に向けた支援やドクターヘリ運行体制の強化も盛り込んだ。

政府は、今回の経済対策による実質GDP押し上げ効果は24兆円程度と試算している。今後3年程度で効果が発現すると仮定した場合、年成長率換算で1.4%程度のプラス効果を見込む。今後、補正予算を速やかに編成し、早期成立を目指す方針だ。