市民科学者は、オーストラリアの生物多様性危機を食い止められるか?
(※本記事は『reasons to be cheerful』に2025年7月31日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

オーストラリアの誰かが外来種をiNaturalistに投稿するたびに、強力な新しい生物保全アラートシステムが作動します。
2023年、ブリスベン郊外の町イプスウィッチで、あるクイーンズランド州民が川で見慣れないハマグリを見つけ、iNaturalistという市民科学者向けのプラットフォームに写真を投稿しました。
写っていたのは「フレッシュウォーター・ゴールドクラム(淡水性の金色ハマグリ)」という外来生物で、これまでオーストラリアと南極以外のほぼ全世界に生息していた種でした。
このたった1枚の投稿によって、オーストラリアの新たな生物保全アラートサービスが作動し、環境保護官が即座に現地からハマグリを除去しました。あわせてその拡散状況を監視するプログラムが立ち上げられました。
オーストラリアは現在、生物多様性の危機に直面しています。同国は厳格な生物保全規制を敷いているものの、意図的・非意図的を問わず、外来の植物や動物、病原体が国内に侵入しているのが現状です。
こうした外来種の特定・追跡・管理を支援するため、オーストラリアの生物多様性データベース「アトラス・オブ・リビング・オーストラリア(ALA)」は、iNaturalistに投稿された市民科学者のデータを国内の生物保全機関と直接連携させる仕組みを構築しました。
ALAは現在、1億5,100万件以上の記録を保持しており、その中には2,300種の外来生物と、約1,000万件の雑草・害虫に関するデータも含まれます。当初は博物館の資料が主な情報源でしたが、ALAの生物保全アナリストであるアンドリュー・ターリー氏によれば、現在は約半数が市民科学者による投稿で、その多くはiNaturalist経由とのことです。なお、ALAはオーストラリア版iNaturalist(国内ノード)の運営も担っています。
現在、オーストラリア国内でiNaturalistを利用している人は12万人以上にのぼり、1日に約1万件の観察情報が新たに投稿されています。オーストラリア版iNaturalistノードには、すでに1,100万件以上の観察記録が蓄積されており、同国はiNaturalistの利用数において、観察件数で世界3位、種の数では2位という上位ランカーとなっています。
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