漆を愛し、古典に学び、未来を拓く 漆芸の美と可能性を無限に広げ世界へ

伝統工芸が斜陽といわれる一方で、漆器は海外を中心に需要が伸びている。中でも世界が注目する若き漆芸作家が浅井康宏だ。艶やかな漆黒に、蒔絵や螺鈿が幻想的に煌めく浅井の漆芸の世界。命が宿ったようなその輝きは未来を感じさせると同時に、9000年もの歴史を持つ漆芸の正統な後継者であることを示している。

文・油井なおみ

 

浅井 康宏(漆芸作家)

恩師の言葉が開いた
漆芸作家への道

幼い頃から絵が好きで、「何かクリエイティブな仕事に就きたいと思っていた」。だがその夢は「漠然」。具体的な進む道までは見えてはいなかった。

「得意なことならずっとやっていたいし自信もある。でも、そうでないことをみんなと一緒に一生懸命やることに意味を見出すことができなかった」

浅井康宏は自分の学生時代をそう振り返る。集団行動が苦手で、小学生から中学生にかけては不登校。

「それで高校は『行くしかない』という状況に置いた方がいいと考えて全寮制の高校を選びました」

その選択が人生を大きく動かした。

「普通科の高校ですが漆芸を学べるコースがあったんです。もともと漆芸に興味があったわけではなかったのですが、漆芸の先生が僕の作品をすごく褒めてくれて。十代半ばで勘違いをさせてくれる恩師に出会えたことは大きいですね」。学ぶうちに漆に魅了され、気づけば「ドハマりしていた」という。そんな浅井に恩師は、職人ではなく「作家になりなさい」と言い続けた。

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