「魅せる仕事」から新たな市場を創る 物流を超えた価値創造

事業構想研究所通信 修了生の活躍

百貨店や商業施設の館内物流を担うワールドサプライ。梅木淳社長は「物流会社」という枠を超え、施設の価値を高める「魅せる仕事」を掲げる。豊洲市場での海外展開支援など、物流という入口から顧客の事業そのものを構想する経営の背景にある哲学と、その原動力に迫る。

梅木 淳 ワールドサプライ 代表取締役社長

「変わらないために、変わらないといけない」

ワールドサプライ代表取締役社長・梅木淳氏は、現在の経営をそう表現する。守るべきものは、お客様とともに価値を創り、社会に貢献するという会社の原点だ。しかし、社会や顧客が変化する中で、その価値を守り続けるには、自らも変化し続けなければならない。その思想は「魅せる仕事」という言葉に凝縮されている。同社は百貨店や商業施設の館内物流を担いながらも、既存の「物流会社」という枠には収まらない事業領域へと歩みを進めている。

ワールドサプライは、佐川急便を中核としたSGホールディングスグループの一員として、百貨店や複合商業施設への納品から館内物流までを担っている。商業施設向け館内物流事業で業界トップクラスのシェアを誇り、新たな視点で顧客の課題解決に資する事業展開も進めている。

2025年4月に、佐川急便の営業部長を務めていた梅木氏が抜擢され、社長に就任。2026年には江東区新砂へ本社移転し、新事業への取り組みも広げる。

梅木氏は自社のことを「物流会社」という言葉だけでは表現できないという。

物流を起点に多様な事業に取り組む。

「私たちは単に物を運ぶ会社ではありません。従来は百貨店の店舗スタッフが行っていた荷物の開梱・陳列なども、自社の配送スタッフが担うため、荷物を運ぶ姿も来館者が目にするサービスの一部となります。館内での立ち居振る舞いや言葉遣いまで含めて施設全体の価値を高めることこそが自分たちの役割だと考えています」

ユニフォーム一つとってもそれぞれの施設コンセプトに合わせて、ブランドイメージに寄り添う設計がなされている。

施設コンセプトに合わせたユニフォームで館内物流を担う。

「私たちのお客様は施設運営者であり、来館者でもあります。課題を解決しながら、お客様と一緒に育っていくことを目指しています」

誰が喜んでくれるのかを常に考える――この姿勢が「魅せる仕事」の原点になっている。

同社に寄せられる相談も、物流だけにとどまらない。「入口は物流でも、解決策は物流とは限りません」と梅木氏は語る。その象徴が、豊洲市場で進める海外展開だ。国内消費が緩やかに縮小する中、約500社の仲卸事業者が個別では開拓しづらい海外販路の構築を、ワールドサプライが物流網も含めて仕組み化し、支援している。グループ会社の経営資源も活かし、外部企業とも連携しながら、現在は米国への展開を進めている。

「物流を提供するのではなく、お客様の事業や価値提供そのものを一緒に考える」と梅木氏は話す。ワールドサプライは、物流会社という自らの事業領域を、「顧客の未来を構想するパートナー」へと書き換えている。

ワールドサプライ本社(江東区新砂)

異業種の交流が
新たな気づきを生む

こうした新しい事業が生まれる背景に、「人と人がつながると、その先に自然と新しい価値が生まれる」という梅木氏の考えがある。

梅木氏は、2022年に、事業構想大学院大学のプロジェクト研究に約1年間参加し、自社の新たな事業となりうる「事業構想計画」を策定した。

「これまでも新規事業には取り組んできましたが、思いつきで進めることが多く、大学院に通ってからは体系的に考え、進めることができるようになりました。また、研究会で異業種の方と議論した経験は貴重でした。業界の固定観念にとらわれていたことに気づき、自社や顧客の新たな価値を発見するきっかけとなりました」

その気づきを活かし、現在は異業種交流の場を自ら運営している。人と人とのつながりから、新しい仕事や企業間の協業も生まれているという。

修了時には、地方創生に関わるプロジェクトを自社の新事業として構想し、地域でのフィールドリサーチも実施してきた。また、大学院の教員から得た「ルールは変えられる」という発想も、大きな転機になったという。法律や規制も変えることでゲームチェンジができるという考え方は、今も新たな事業に取り組む際の指針になっている。

「使命感」と「利他行」の考え

「事業構想で大切なことは『自分自身の強い意志とやり抜く力』だと、大学院に通う中で強く感じました。その意志の源泉は、自社の利益にとどまらない『使命感』にあると考えています」

梅木氏が経営の根幹に置くのは「利他行」の考え方だ。「自分や自社の利益ではなく、関わるすべての人のためになるか」を常に問い続けるという。

組織づくりにおいても、社長や役員がいなくても回る「自走式組織」を目指し、多様な価値観が混じり合うダイバーシティ経営を志向する。年齢も国籍も異なる人材が混じり合うことで、これまでにない発想や相乗効果が生まれているという。

「今年入社した若手社員が、この先40年、50年と会社を支えていきます。だからこそ、次の世代が自ら考え、動ける組織にしていく必要があると考えています。また、経営者となり、中長期視点の重要度が上がり、人的資本に対する考えも変わりました。教育を将来への投資と考え、注力しています」

現在、複数名の社員を、事業構想大学院大学のプロジェクト研究に派遣し、自社の次なる事業を構想すべく、研究を進めている。

社会課題を捉え、顧客のその先の顧客を見つめ「誰が喜ぶか」を問う梅木氏の視座が、物流を超えた新しい産業モデルを生む原動力になっている。

 

梅木 淳(うめき・あつし)
ワールドサプライ 代表取締役社長(事業構想大学院大学 佐川急便プロジェクト研究 修了生)