人材の流動化と押さえるべき法規制 労働者派遣と雇用のルール

今般の通常国会において、平成27年9月、労働者派遣法の改正法が可決成立した。今回の改正は、一般的に労働者派遣を拡大していく方向での改正であり、今後、派遣労働者の拡大を促進する可能性があるものとなっている。

人材の流動化に関わる法規制の推移

日本では人材の流動化の程度が国際的に比較して低いと一般的に言われている。大学を卒業した者を新入社員として採用し、その後、定年まで勤務するという長年の慣行が根底に残っていることも理由であるのかもしれないが、法律家の観点からすると、労働者の解雇が裁判所によって厳しく規制されていることを理由の一つとして挙げざるを得ない。

労働基準法などの法令には、どのような場合に解雇できるかについて具体的に書いてあるわけではないので、個々の事例ごとに裁判所が判断することになるが、裁判所が解雇を有効とするハードルは一般的に高い。社内の事業再編に伴ういわゆる整理解雇についても、人員削減の必要性、解雇回避措置の相当性、人選の合理性、手続の相当性のいわゆる「整理解雇4要件」が必要で、これについても裁判所は使用者にとって親和的とはいえない。

雇用という形態に対して、労働者派遣であれば、派遣先の使用者は、派遣労働者を直接雇用しているわけではない。そのため、派遣先の使用者において「解雇」といった問題は原則として生じないので、直接雇用をするよりも柔軟に労働者の流動化を図ることができる。リーマンショック後に、多数の派遣労働者が職を失い、いわゆる「派遣切り」として社会問題となったことは読者の記憶にも残っていると思う。

この「派遣切り」の問題を受けて、民主党政権下で成立したのが、平成24年の労働者派遣法改正であった。ここでの目玉の一つとなった改正は、いわゆる「労働契約申込みのみなし制度」である。派遣期間制限に違反して派遣を受け入れることなどの事由があった場合には、派遣先によって労働契約、つまり雇用の申込みがあったものとみなしてしまうという制度である。例えば、旧法で期間制限のなかった専門26業務に該当しない職種であるにもかかわらず、その期間制限を超えて派遣労働者を使っていたとなると、派遣先により雇用の申込みがあったものとみなされてしまい、その派遣労働者が雇用を承諾すれば、派遣が雇用になってしまう。旧法での期間制限のない専門26業務に該当するかどうかが必ずしもはっきりしない職種があったところ、専門26業務に該当しないと判断されてしまった場合に、期間制限を超えて派遣労働者を使ってしまうと、その派遣が雇用となってしまうリスクが派遣先にあった。

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