2014年9月号

MPDサロンスピーチ

メガトレンドに乗れ 下位シェア日本企業の活路は「アジア」

加藤順彦(事業家)

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シンガポールに拠点を持ち、海外事業や投資を行いながら「海外で成功する日本人を作る」ことを目標に活動する加藤順彦氏。自身の経験を踏まえながら、アジア市場の可能性と下位シェアの日本企業のこれから取るべき道を話した。

事業家の加藤順彦氏は、大学生時代から数々の起業に参画している

新産業がメガトレンドに

人口減少と超高齢化を迎える日本。この先、国内市場がシュリンクし続けるのは誰の目にも明らかだ。では今後、日本の企業や個人の事業家はどのような舵取りを行えばいいのか。加藤氏は「業界4位、5位に甘んじている国内企業こそ、アジア市場にその活路を見出すべき」と明確なロジックとともに力説する。

大学在学中よりベンチャーの参画に加わり、20代半ばで広告代理店を創業した加藤氏。ビジネスを行う過程で、既存の業界はマーケットリーダーによりすでにルールが整備されており、新規事業社は踏み込めない領域が存在することに気づく。そこで当時Windows95がリリースされ黎明期を迎えたばかりのインターネットの世界へと進出していく。

「自分の会社を含め多くのインターネット広告を扱う会社が生まれ、短期間でどんどん業績を伸ばしていきました。なぜ急成長することができたのか。それはインターネットという新しい産業自体が急速に拡大していったからです。手付かずの新産業を目指した結果、世の中のメガトレンドを掴み追い風に乗ることができたのです」

日本に残された椅子が減少

この「メガトレンドを掴む」ことの重要性を加藤氏は繰り返し強調する。いくら優秀な人間を集めたとしても縮小していく産業では、向かい風に立ち向かうようなもの。よくて現状維持にとどまるのが関の山だ。加藤氏は、2005~2006年ごろから日本という国そのものが縮小をはじめていることに気づいていく。

「ライブドア堀江氏の逮捕などショッキングな事件もあり、2006年にはIT企業の株価が軒並み下落しました。他にも、グレーゾーン金利問題で消費者金融が風前の灯となり、2005年のマンション耐震偽装問題によってマンション・ディベロッパーが立ち行かなくなりました。そして戦後から伸び続けていた国民の給料の総和であるGDPが、このころを境に停滞をはじめたのです。この時、日本が衰退しはじめ、残された椅子が減ってきていると感じました」

経済が停滞をはじめると国民の意識は保守化へと進んでいく。特に日本は高齢者の数が急増中だ。高齢者は失敗を恐れるあまり変化を好まない傾向を持つが、それはもちろん消費にも影響していく。いくら広告によって新しいブランドを提案したとしても、それまでのライフスタイルを変えてまで新ブランドを手にしようとは思わなくなる。つまり日本は、ブランドスイッチが起こりにくい国となっているのだ。

アジアマーケットで活路を

変化の好まない保守層が増えれば、現在トップシェアの企業はむしろ有利に働くだろうと加藤氏は指摘する。好んでいるブランドを変えないということは現在のトップシェアの地位はより盤石となり、シェアは拡大の一途をたどる。一方、厳しくなるのはシェア下位に甘んじている企業やベンチャーとなる。少子高齢化が進みブランドスイッチが起こらなくなると、勝ち組はより勝つことができ、負け組はより勝てなくなるのだ。

「そこで椅子が減っている日本よりも、劇的に増えているアジアのマーケットにぜひ参入してほしいと思うのです。メガトレンドを掴む、追い風に乗るという話をしましたが、今、新しい椅子がどんどん増えているのはなんといってもアジアです。例えばインドではまだ世帯の半分に電気が通っていません。これからインフラが整備されるにつれ電化製品などの新しい需要が次々と生まれていきます。アジアにおいて広告はブランドスイッチとしての役割ではなく、今まで必要としていなかった新しい商品を紹介するための手段となります」

状況をポジティブに捉える

フマキラーはインドネシアを開拓して殺虫剤のトップシェアを獲得。エースコックはマレーシアにインスタントラーメンという新マーケットを持ち込んだ。新しい産業を持ち込めばマーケットリーダーになることが可能だ。先駆者となれば、自分たちに有利なルールを整備できる可能性も大いにある。

これから伸びる国はインドと中国の2カ国だろうと加藤氏は話すが、どちらも外資の規制が厳しい国だ。そこで中国であれば香港に、インドであればシンガポールに拠点を置くことを加藤氏は勧める。特に加藤氏自身が拠点を置くシンガポールは、外資規制がないため外国人にとって非常に活動がしやすい国だと話す。

「残念ながら、メガトレンドを自分で操作することはできないし、少子高齢化を変えることもできません。しかし今起こっている状況をポジティブに取るかネガティブに考えるかで、自分のビジネスが追い風になるか向かい風になるかが変わってきます。風の吹いている側に背中を向ければどんな風であれ追い風になるのです。風向きを見て、風を背中に受けながら事業を推進してほしいと思います」

パワフルな語り口と自身の経験から裏付けされた説得力のある講演を終えた加藤氏には、大きな拍手が巻き起こった。

事業構想大学院大学のサロンスピーチにて講演。院生から次々と質問が飛び交い、熱い議論が行われた

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