COVID薬候補の特定臨床研究を開始 事業構想大根来教授らの成果

ソルボンヌ大学医学部、ハーバード大学医学部において、根来秀行教授の研究チームは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症化に関与するサイトカイン(IL-6など)を抑制できる可能性があるメカニズムを突き止めた(現在、論文投稿準備中。一部は2020年10月に開催されたAmerican Society of Nephrology学会総会にて発表)。

動植物の細胞内で生命活動に必要なエネルギーを生産する器官であるミトコンドリアにおける、ヘム生合成を活性化するプロセスで出来る物質によって、SARS-CoV-2(COVID-19の原因ウイルス)を含むウイルス増殖が抑えられることが分かったものだ。同教授らの研究チームは、コロナ禍の中、新型コロナウイルス感染症(以下COVID-19)、およびCOVID-19重症化のメカニズムに関する研究を継続していた。

このヘム生合成を活性化する薬剤の1つとして5-aminolevulinic acid(5-ALA)/ sodium ferrous citrate (SFC)を特定し予備的な研究を開始したところ、一定の効果が見込めるデータが得られた。そこで、2020年10月29日、国立大学法人長崎大学(長崎県長崎市)において認定臨床研究審査倫理委員会の承認が得られ、5-ALAを用いたCOVID-19患者を対象とする特定臨床研究が開始されることになった。

2020年12月7日時点では、特定臨床研究に参加するCOVID-19の軽症・中等症の患者を募集しており、条件を満たす該当者が見つかり次第、5-ALAの投与を開始していく段階に入っている。

5-ALAはアミノ酸の一種であり、ミトコンドリアが機能するために重要な役割を果たす。すでに医療分野で光増感剤として光線療法などに用いられており、今回の研究では全世界的に対策が急がれるCOVID-19に対する5-ALAの効果や安全性の検証が行われる。

5-ALAが研究対象に選ばれた背景には、長崎大学熱帯医学・グローバルヘルス研究科長の北潔教授らが5-ALAの機能性に着目してマラリア治療薬の開発を進めてきた経緯もある。
今回の特定臨床研究では、これまでの研究で幅広い感染症への効果が期待される5-ALAのCOVID-19に対する安全性・効果を検証する研究が開始される。

特定臨床研究は長崎大学 認定臨床研究審査倫理委員会の承認を経たフェーズII相当の試験。フェーズIで安全性が確認された範囲内で同意の得られた少数の患者に実際に5-ALAを摂取してもらい、その効果・安全性を検証することとなる。研究概要は国立保健医療科学院の臨床研究実施計画・研究概要公開システムにて公開されている。

今回の研究は長崎大学病院を中心に複数の医療機関が参加する多施設共同研究で、事業構想大学院大学理事・教授も務める根来秀行教授は、国内で兼務する奈良県立医科大学医学部教授として参加する。

世界的に感染が広がる中、日本発の研究によりCOVID-19克服の糸口が見出されることが期待される。

virus.jpeg