CEOの7割超が臨床的に高いストレス水準に
経営コンサルティングファームのボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)は、2026年4月30日、CEOが直面するストレス要因を分析したレポート「What (and Who) Is Keeping CEOs Up at Night?」を発表した。売上高1億ドルから50億ドル超の企業を率いるCEO500人へのアンケート調査と、S&P 1200構成企業におけるCEO交代に関するデータ分析を組み合わせた本調査により、現代の経営者が置かれた心理状況が明らかになっている。
業績プレッシャーが招く臨床的高ストレス
調査によると、CEOの平均ストレススコアは66.7に達し、7割超が臨床的に高いストレス水準にあることが判明した。主な要因は「成長目標の達成」や「コスト管理」など従来型の業績プレッシャーである。回答者の57%が短期的な課題に多くの時間を割かれていると答えており、長期的なリスクや機会への対応が後回しになる懸念が生じている。
BCGミュンヘン・オフィスのマネージング・ディレクター&シニア・パートナーで、本レポートの共著者であるジュディス・ウォーレンシュタインは、取締役会自身も強いプレッシャーにさらされており、その緊張感がCEOに伝わっていると指摘する。実際、ステークホルダー別で最も大きなストレス源となっているのは「取締役会」であり、次いで「従業員」「経営陣」が続く。経営陣はストレス要因の上位3位に入っており、特に大企業のCEOにとっては最大のストレス要因となっている。また、CEOの4分の1以上が、最高経営幹部の中で自らの職位を脅かすリスクが最も大きい存在としてCFOを挙げている。
過小評価される「株主アクティビズム」と「従業員の不満」
レポートは、CEOが認識しているストレス要因と、実際の退任リスクとの間に乖離があることにも警鐘を鳴らしている。
まず株主アクティビズムへの関心の低さである。アクティビストの標的になるとCEO交代の可能性が24%高まるという分析結果がある一方、経営者の認識ではアクティビストはストレス要因の下位に位置付けられている。短期的な業績達成へのプレッシャーが強まる中、長期戦略を支持する株主基盤を十分に構築できていなければ、業績が揺らいだ局面でアクティビズムが現実のリスクとして浮上する可能性がある。
次に従業員の不満による離職リスクである。従業員の純増率が10%低下すると退任の可能性は12%高まるが、従業員の不満を懸念するCEOは半数未満にとどまり、対応が不十分なままであれば離職の増加につながる可能性がある。
そしてAIは将来的に圧力となる可能性がある。AIは現状、ストレス要因としては11項目中9位に位置しており、CEOの84%がイノベーションの必要性に対してストレスよりも意欲を感じていると答えている。しかし、CEOがAIに関する発表を行うたびに市場の期待は高まっていき、より早期に成果を示すことを求められる可能性がある。
多くのCEOが自らの役割を孤独なものと感じており、多方面からのプレッシャーを一手に引き受け、心理的に大きな負担を抱えている。本レポートは、CEOには短期的な業績への対応という喫緊の課題と、長期的リスクへの対応や組織の健全性の維持といった目に見えにくいものの同様に重要な課題の双方に向き合うことが求められていると指摘している。