経産省、企業価値を高める「標準化・ルール形成」を提言 投資家と経営層の対話促進へ新資料公表

経済産業省は2026年4月、資料「企業価値を高める標準化・ルール形成 ― 投資家と経営層の新たな視点 ―」(本編全41ページ・概要版14ページ)を公表した。標準化・ルール形成が企業価値や投資判断とどう結びつくかを整理し、企業と投資家双方への浸透および両者の対話に役立てることを目的としている。投資家・企業へのヒアリング、これまでに確認できた取組事例等を参考に作成された。

経済産業省公式HPより

「技術で勝ってビジネスに負ける」状況に警鐘

資料はまず、技術性能で勝っても「評価方法・接続条件・適合規格」等のルールを握られ、ビジネスモデルで凌駕される事例が業界横断的に広がっていると指摘する。具体例として、1990年代のVHS対ベータ、2000年代のガラケー対iOS/Android、2010年代の日本対米国・台湾の半導体、そして2020年代のスパコン・国産LLM対AI・クラウドプラットフォームを挙げ、競争の主戦場が「製品規格」から「社会インフラ標準」へ移行してきた経緯を整理した。ルールが定まった後に待つのは「価格競争・後追い・低収益」であり、ルールを作る側に回らなければ利益率の低下と投資余力の喪失を招くと警鐘を鳴らしている。

5段階のステップで「最初の一歩」を提示

経産省は、企業が標準化・ルール形成にどう向き合うかを5段階で整理した。Step0「無意識・属人的段階」、Step1「守りの標準化(対応)」、Step2「使う標準化(活用)」、Step3「設計する標準化(競争軸化)」、Step4「市場をつくる標準化(創造)」の段階である。順番通りに進むことにとらわれず、直ちにStep4へ挑戦する必要性が高い場合など、各社のニーズに応じて妥当なステップを選択することが期待されると注記している。資料は、標準化が長期投資である一方、単体の収益貢献を定量化しづらいなど、企業と投資家の間に時間軸・収益性の見せ方・開示範囲など6類型のギャップがあると分析。価値協創ガイダンスを活用した共通言語化や、TCFD・ISSB等のフレームによる翻訳が有効だとしている。

4社の事例から「社内コンサル化」など示唆

本編には、PBR1倍以上の上場企業4社の事例(A社〜D社)が掲載された。経営層・部長級参加の「国際標準専門部会」を四半期開催し、競合/先進企業の事例研究で経営層を巻き込んだA社、知財部門をプロフィットセンター化し、大型投資は二桁億規模をCFO承認+保有数×金額の投資カーブで判断するB社、知的財産部(標準化推進部門)が「社内コンサル」として事業部・営業に伴走するC社、中期経営計画に標準化を位置づけ、事業部・国際標準化グループ・知財部の三者協議でテーマを選定するD社の取り組みが紹介されている。投資家ヒアリングからは「『標準化』という単語で投資家を惹きつけようとしても、ほとんど見向きをされない」「『ルール形成』と言われると理解できる」「統合報告書に一言書かれるだけでは納得性が生まれない」といった声も収録された。

「守る側」から「作る側」への転換を提言

資料は最後に「標準化・ルール形成は、企業価値設計そのもの」とし、①標準化はコストではない競争環境を設計する経営手段、②技術の話ではなく経営・投資の言葉で語ることが重要、③ルールを「守る側」から「作る側」へ、と総括した。経産省は併せて、標準化・ルール形成に取り組む上で必要となる力として「市場形成力」に着目し、これを可視化するツールとして「市場形成力指標」を考案、その改善も進めている。

資料概要

資料名は「企業価値を高める標準化・ルール形成 ― 投資家と経営層の新たな視点 ―」(本編41ページ)および同概要版(14ページ)。発行は経済産業省 イノベーション・環境局 基準認証政策課、公表は2026年4月。本編PDFから入手可能。関連情報を含む特設ページ「企業価値と『標準化・ルール形成』」からは、概要版PDFや「市場形成力指標」関連資料、「市場形成ガイダンス」もあわせて参照できる。