TRILL.、国交省 地域交通維持へ社用車シェアの実証実験を開始
信州大学発スタートアップのTRILL.は2025年11月10日、国土交通省の「交通空白」解消パイロット・プロジェクトとして、長野県内37社の法人車両100台を活用したカーシェアリング実証実験を開始した。長野市66台、上田市22台、松本市10台など県内4市村で展開し、2026年3月まで実施する。公共交通が不足する地域に新たな移動手段を提供しつつ、法人の車両維持費削減を同時に実現する全国初の取り組み。
長野県では運転手不足や人口減少を背景に民間バス路線の撤退が相次ぎ、2025年9月末に3路線、2026年3月末にさらに3路線の計6路線が運行終了予定だ。TRILL.の「OURCAR」は営利を目的としない「共同使用契約」方式を採用。車両提供者は維持費の範囲内で共同使用料を受け取るため、カーシェアなどで採算が合わなかった地域でも持続可能な交通手段となる可能性がある。
実証では、各企業が業務で使用しない夜間や休日の社用車をWebアプリで予約可能にし、30分300円からの料金設定で提供。買い物や通院が困難な地域住民、子供の送迎が必要な家庭、観光客など幅広い層の利用を想定する。社用車をシェアする組織としては、原村役場、アスクホールディングス、小柳産業、滝沢板金塗装、長野県医師会、野村屋、松本調剤薬局など地域の多様な法人が名を連ねる。
国交省は地域交通DX推進プロジェクト「COMmmmONS」の一環として本実証を位置づけ、制度的・技術的・事業的課題を検証。TRILL.代表の藤森研伍氏は「助け合いをテクノロジーでリデザインし、法人車両から個人所有車へと利用の輪を広げ、長野から全国・海外展開を目指す」と意欲を示した。