「つくる」を問い直す国際イベント、京都で開幕 アート・デザイン・クラフトを横断 実行委員長・安西洋之氏に聞く
アート、デザイン、クラフトを横断する国際イベント「Kyōto YouMe Triennale」が10月9日、京都で開幕した。18日まで10日間、東本願寺の渉成園などを会場に開く。3年ごとに開く催しの初回にあたり、「マニフェスト」の名を冠した。実行委員長の安西洋之氏に、そこに込めた狙いを聞いた。
アート、デザイン、クラフトの境界をはずし、「つくる」を考える
主催はKyōto YouMe Triennale実行委員会。メイン会場は東本願寺の飛地境内地にある渉成園と、隣接する重信会館。京都や滋賀の工房や自然を訪ねる体験プログラムも組み込まれている。実行委員長の安西洋之氏のほか、ペンタグラム、リバティ、ミラノ工科大学、DESIGN KYOTOなどから8人がキュレーターを務める。
テーマは「つくること。それは、意味をつくること。」。アート、デザイン、クラフトを「つくる(making)」行為の意味を捉え直す。創造に費やす時間、受け継がれてきた知識、手仕事の固有性。そうした価値にもういちど目を向けてもらうためだ。
「メイクというのは、身体的に何かを作ることもそうですが、構想やコンセプト、アイデアを作るのもそうです。それらを全部統合して『メイク』と言っています。『メイク』を軸にすえるとき、『アート』『クラフト』『デザイン』の境界も曖昧になります。これらを包括的に見ることで、近代ヨーロッパで確立された3つの区分と社会的な位置づけを問い直してみたいと思っています」。
文化とビジネスをつなぐ
安西氏は「ビジネス+文化のデザイナー」として、東京とミラノを拠点に活動する。異文化のギャップを読み解く手法を組み立て、書籍や講座で発信し、企業の商品企画や海外展開を支えてきた。
「若いころ、英国のスポーツカーメーカーとの共同開発に関わりました。向こうの開発者は、創業者が何を考えていたか、歴史的・文化的な背景を常に顧みながら進めている。新しいコンセプトは、歴史や文化を丁寧に掘り下げるところから生まれることを知ったのです」。その後ヨーロッパへ渡り、トリノのデザイン会社を経てミラノで独立した。
リバティとの縁から、世界の仲間へ
Kyōto YouMe Triennaleの構想は、英国の老舗百貨店リバティとの縁から動き出した。1875年にアーサー・ラセンビィ・リバティがロンドンに開いた、東洋の織物や工芸品を扱う店である。1880年代には日英折衷様式のデザイナーの作品を並べ、ヴィクトリア朝の日本ブームを牽引した。やがてデザインへ軸足を移し、1890年代以降は、手仕事の復権を掲げたアーツ・アンド・クラフツ運動の作り手に壁紙や生地を発注、「スタイル・リバティ」と呼ばれる独自のテキスタイルで知られるようになった。2025年、創業150年の記念展は、「日本から刺激を受けて会社の歴史がある。日本へ返礼をする」という意向のもと、ロンドン本店、大阪・関西万博の英国館を経て、京都を巡回することとなった。
並行して、安西氏はリバティの関係者らと京都・丹後を訪ねた。案内役は、10年にわたり工房を一般公開する「オープンファクトリー」を続けてきた北林功氏。京都にプラットフォームをつくる議論は、ここから具体化していった。
こうした経緯から生み出されたトリエンナーレは、組成も従来の国際イベントとは異なる。
「日本人でコンセプトを決め、海外からアーティストや講演者を招聘するケースが多くみられますが、我々はコンセプトのところから複数の国でやっているので、参加する人がそれぞれの国の仲間を連れてくる。『クレイジー』にもみえる挑戦でもありますが、そうやって『仲間』を増やし、対話をしながらコンテクストを編んでいきます」。
京都を磁場に、世界を巡る
渉成園では、伝統技法をルーツに持つ新世代作家10組の展示と、リバティの記念展が並ぶ。重信会館には、イタリア、カタール・UAE、インドの各展と、写真展「Project Blue」。ウルトラマリンの原料となるラピスラズリは、アフガニスタン北東部で新石器時代から掘られてきた。ツタンカーメンのマスクからルネサンスの絵画まで、人類が使ってきた青の多くがこの土地から出ている。
来年春にはロンドンのリバティで今回の展示の一部を見せ、その先も各地に提携先を広げていく。
「つくることやクラフトの価値について語るなら京都だと、世界の人が思うような場にしていきたい。伝統と文化、アカデミズム、商業。それらが織りなしてきたものに向き合い、対話をしながら未来を考える。文化や歴史への視線が、コンセプトの鍵になるという、私がヨーロッパへ渡ったときの動機と同じ文脈が、この街にはあります」。