CO2を大量に吸収する微生物を発見 DNA研究でさらなる効果の可能性も
気候変動に立ち向かうための新たな助力となる細菌が発見された。この細菌のDNA構造を解明することができれば、二酸化炭素の削減に大きな貢献をする可能性がある。(※本記事は『Grist』に2024年11月5日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)
地球の極端な環境には、非常に多様な微生物が存在しており、その中には人類が大気中に放出した二酸化炭素を取り除く手助けをするものもあるかもしれない。
特に注目されている微生物がある。それは、「チョンクス(Chonkus)」という愛称で呼ばれるシアノバクテリア(光合成を行って酸素を発生させる細菌)で、二酸化炭素を大量に吸収する能力を持っている。これは、火山活動が活発な海底熱水噴出孔で発見されたもので、これまで知られていなかった新種のシアノバクテリアだ。専門誌 Applied and Environmental Microbiology に発表された最近の論文によると、この細菌は他のシアノバクテリアと比べても優れた大気浄化能力を有しており、もし科学者たちがその遺伝子を改良できれば、廃棄物が少ない炭素回収システムに応用できるかもしれないという。
シアノバクテリアは、アオコという誤った呼び名で呼ばれることもあるが、植物のように光合成を行う水生微生物であり、光と二酸化炭素を吸収して食物に変える能力を持つ。しかし、その単細胞の体内には二酸化炭素を濃縮して吸収する特殊な構造があり、これにより他の植物に比べて多くのCO2を取り込むことができる。過酷な環境に適応することで、自然界では見られないユニークな特性を進化させることがある。微生物研究者にとって、これまで扱われてきた酵母や大腸菌といった管理しやすい微生物群とは違う多様な微生物は新たな可能性を秘めている。
「新しい微生物を分離させることに対する期待は高まっている」と語るのは、チョンクスを発見したという論文の著者の一人である微生物学者のブレイデン・ティアニー氏。ティアニー氏とイタリアのパレルモ大学の研究者たちは、2022年9月にシチリア沖のブルカーノ島での調査に出かけた。この島には、浅い海域にある火山性の熱水噴出孔があり、そこでは二酸化炭素が豊富に含まれた水が太陽光に照らされている。この場所で採取された海水から、チョンクスをはじめとする多くの微生物が発見された。
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