XENCE、金属3Dプリンターで未利用森林資源を生かす建築モジュール創出

建築ベンチャーのXENCE Architecture Studio(名古屋市、以下「XENCE」)は、溶接タイプの金属3Dプリント技術を活用し、森林資源の循環と建築の多様性実現を目指した実証建築「WOOD X NODE」の設計および施工を完了したことを、11月22日に発表した。

本プロジェクトでは、シモダフランジがオランダMX3D社から導入し、株式会社竹中工務店・シモダフランジ株式会社が共同で開発を進める、溶接タイプの金属3Dプリント技術(WAAM方式金属3Dプリンター)を用いて、未利用木材と金属3Dプリンター製ジョイントによるシェルターモジュールを岐阜県に建設した。

XENCEは、3Dプリンターの造形性を生かした部材形状デザインと、製材‐大工‐組立といった既存の製造サプライチェーンを巻き込んだ、大型建築における金属3Dプリンター活用展開を実施した。今回、3Dプリンターによる単一部材の製造ではなく、複数の部材や素材で構成される建築架構システムを提案し、ジョイント部のデザインに材料の有効な形状・配置を探索するトポロジー最適化技術を用いて、軽量かつ施工性の高い金属3Dプリンター製ジョイント部材を開発。実際に木材と接合させ、多素材による建築架構システムの実証を行った。


木材は、三重県熊野市の製材業者である株式会社 nojimokuとも連携し、従来廃棄されていた三日月状の周辺部材(ミミ材・チップ材)を活用。製材過程で生じる副産材を建築材料として再価値化する森林循環型社会の一端を実現した。金属3Dプリンターと地域木材との組み合わせにより、 建築の多様性・地域性を担保すると同時に、標準化・大量生産型からの脱却を図ることを目指す。

3Dプリンターに代表されるデジタルファブリケーション技術は、林業や製材業といった地方産業と、建設産業を直接連携させる新たな産業構造モデルとなり得るとの見方から、本プロジェクトでは、ばらつきのある木材の活用・小ロットで生産されたジョイント部材・小人数での組立て施工といった特徴を打ち出している。それにより、これまで相反する関係にあった効率化と個別対応を両立させる可能性を提案する。

建設業においても、自由な形状が生成でき、省人化・省資源化・省工程に貢献する3Dプリンターの活用が進んでいる。樹脂やモルタルなど、さまざまな素材に対応するものとして、金属3Dプリンターへの注目度が高まっている。中でも、溶接タイプの3Dプリンター(Wire Arc Additive Manufactureing : ワイヤー&アーク付加製造, WAAM)は、造形速度と経済性に優れ、建築スケールの部材造形に適している。

XENCEは、今後も、金属3Dプリンターを建築に活用することで、農村部における他産業からの建築素材の創出や、都市部における解体材・廃材の有効活用を進め、「3Dプリンター×建設業」をハブとした新たなサーキュラーエコノミーの構想を実現していく。例えば、古民家から解体時に排出される柱材や梁材をなどの廃材を、廃材それぞれの継ぎ手・仕口に適したジョイントを3Dプリンターにより製造すること新たな構造体を設計・施工したり、木造密集地のシェルター構造物を製作したりなど、建築×林業×デジタルファブリケーションの軸で、サーキュラーエコノミー・地方創生・SDGs対応・産業構造の変革を加速していく。