京大、住友林業 木造人工衛星「LignoSat」完成、JAXAに引き渡しへ

京都大学と住友林業は、2024年5月28日、世界初の木造人工衛星「LignoSat」の完成を発表した。6月4日にJAXAへ引き渡し、宇宙空間での運用に向けた準備が始まる。

2020年4月から取り組んできた「宇宙木材プロジェクト(LignoStella Project)」の成果。約4年かけて開発した木造人工衛星は1辺が100mm角のキューブサットと呼ばれる超小型の衛星で、NASA・JAXAの厳しい安全審査をクリアし、宇宙での木材活用が公式に認められました。

今後は2024年9月に、米国フロリダ州のケネディ宇宙センターから打ち上げ予定のスペースX社のロケットに搭載し、国際宇宙ステーション(ISS)に移送する予定だ。ISS到着から約1カ月後に日本実験棟「きぼう」から宇宙空間に放出する計画を立てている。木造人工衛星から送信されるデータ解析を通じて、木材利用の拡大を目指す。

2022年にISSの船外プラットフォームで実施した木材宇宙曝露実験や、地上での振動試験、熱真空試験、アウトガス試験などにより、人工衛星としての安全性を確認した。これらの物性試験の結果から、宇宙でも安定して使用できる樹種として、ホオノキ材が人工衛星の材料として選ばれた。宇宙空間は温度変化が大きく、強力な宇宙線が飛び交う過酷な環境だが、割れ、反り、剥がれなどはなく、優れた強度や耐久性を確認できたという。また組み立てに当たっては、ネジや接着剤を使わずに精緻・強固に組み上げる「留形隠し蟻組接ぎ」という日本古来の伝統的技法を採用した。

役目を終えた小型の人工衛星は、宇宙空間でゴミにならないよう、大気圏に再突入させ燃焼させることが国際ルールとなっている。金属製の衛星は燃焼の際に微粒子を発生し、地球の気候や通信に悪影響を及ぼす可能性があるが、木材は大気圏再突入で燃え尽きるというメリットがある。

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