サーキュラーエコノミーへの転換に向けた取り組みを議論

学会「企業と社会フォーラム」(JFBS)の第10回年次大会が2021年9月2日、3日の2日間、オンラインで開催された。世界各地で取り組みが進む「サーキュラーエコノミー」をテーマに、日・米・欧の大学研究者や先進的な取り組みを進める企業関係者を招き、報告・議論が行われた。

キーノートスピーチでは、バージニア大学教授のエドワード・フリーマン氏、ESCPヨーロッパ・ビジネススクール教授のヴァレンティナ・カルボーン氏、駐日欧州連合代表部 公使参事官・通商部部長のマリュット・ハンノネン氏、サントリーホールディングス 執行役員コーポレートサステナビリティ推進本部長の福本ともみ氏が登壇した。

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エドワード・フリーマン氏(バージニア大学教授)

ステークホルダー資本主義と企業倫理を専門とするフリーマン氏は、サーキュラーエコノミーはステークホルダー資本主義と同時に推進していくべきものであると指摘。
実践に必要な視点として、パーパス(存在意義)とプロフィット(利益)の両立、すべてのステークホルダーに向けた価値の提供、ビジネスを社会を進歩させる一手段であると位置づけること、人間性の重視、ビジネスの中に倫理を取り込むという5点を挙げた。

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ヴァレンティナ・カルボーン氏(ESCPヨーロッパ・ビジネススクール教授)

続いてESCPヨーロッパ・ビジネススクールのカルボーン氏は「サーキュラーエコノミーの成功をどう説明するか」と題して、現在世界中でサーキュラーエコノミーが積極的に推進される理由を、人新世の観点から考察。
市場や技術が課題を解決するといった観点では意図せざる結果につながる恐れもあるとしたうえで、強力なサステナビリティ実現のためにはよりラディカルな変化が必要であり、ビジネスの文脈のみならず正義の問題や地域コミュニティのなどにも目を向けるべきとした。

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マリュット・ハンノネン氏(駐日欧州連合代表部 公使参事官・通商部部長)

3人目の駐日欧州連合代表部・ハンノネン氏はEUにおけるサーキュラーエコノミー・アクションプランについて説明を行った。資源の枯渇や生物多様性の損失、そして気候変動への対応のためにサーキュラーエコノミーへの移行が必要であるとし、現在は製品設計の段階からサステナビリティに配慮するような仕組みづくり、法整備を進めているとし、電気製品や繊維、食品など分野ごとのサプライチェーンの見える化、EU域外との連携も推進中であることを解説した。

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福本ともみ氏(サントリーホールディングス 執行役員コーポレートサステナビリティ推進本部長)

サントリーホールディングスの福本氏は、企業における取り組みとして、創業者である鳥井信治郎が唱えた「利益三分主義」とステークホルダー資本主義の類似点にも触れつつ、サントリーでのサステナビリティに関する活動を紹介。
製品づくりに直結する水源地の保全・涵養活動や、近年注目が集まるプラスチックリサイクルに関して、競合他社や他業界も巻き込んだ取り組みについて紹介した。

キーノートスピーチをふまえたプレナリーセッションでは法学や科学技術の専門家も交え、サーキュラーエコノミーの実践について具体的な議論が交わされた。