エネルギーの今がわかる! 「エネルギー白書2024」のポイントを解説
(※本記事は経済産業省が運営するウェブメディア「METI Journal オンライン」に2024年6月26日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)
エネルギー白書では、毎年のエネルギーを取り巻く動向や、日本の取り組みなどを紹介しています。2024年6月に公開された「エネルギー白書2024」のポイントを解説します。
福島復興の進捗
2023年8月、廃炉を着実に進め、福島の復興を実現するためには決して先送りにできない課題である「ALPS処理水」の海洋放出を開始しました。
放出前後にはモニタリングを実施し、安全に放出されていることが確認されています。放出は国際原子力機関(IAEA)からも国際安全基準に合致していると結論が出されており、欧米などでも理解が広がっています。
▶ALPS処理水とは:みんなで知ろう。考えよう。ALPS処理水のこと
福島では、「帰還困難区域」のうち、「特定復興再生拠点区域」の避難指示を、2023年11月までにすべて解除しました。加えて、2020年代をかけて、帰還意向のあるすべての住民が帰還できるよう、避難指示解除の取り組みを進めていく「特定帰還居住区域制度」を2023年6月に創設しました。今後、除染やインフラ整備などが行われます。
カーボンニュートラルと両立したエネルギーセキュリティの確保
中東情勢の悪化により海上交通の要衝である紅海の通航量が半減し、さらには干ばつや水位低下によりパナマ運河の通航量も4割減少しました。サプライチェーン全体でのセキュリティ確保が重要な課題となっています。
2022年に急騰した石炭や天然ガスの価格は下落したものの、2010年代後半の2~3倍の水準が継続し、燃料価格の今後の見通しは依然不透明です。
また、世界的な脱炭素の進展によりLNGなどの上流部門への投資が減少するといった課題に加え、「GX」×「DX」の進展により日本の今後の電力需要が増える可能性も指摘されています。
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日本では燃料価格高騰に円安が重なり、化石燃料の輸入額が2020年からの2年間で22兆円以上増加し、2022年には過去最大の貿易赤字(年間20兆円超)となりました。
このようなリスクを根本的に解決するには、省エネや脱炭素エネルギーへの投資促進策などを通じて、エネルギー危機に強い需給構造へと転換することが必要です。
GX(グリーントランスフォーメーション)・カーボンニュートラルの実現に向けた課題と対応
世界全体の温室効果ガス排出量は、途上国(非OECD)の排出増加により増加しています。世界全体の3%を排出している日本は、2030年度の46%削減目標(2013年度比)に向けて、着実に削減が進捗しています。
こうした中、化石エネルギーを中心とした産業構造・社会構造を変革し、CO2を排出しないクリーンエネルギー中心へと転換する「GX」に向けた取り組みが世界中で加速しています。
日本でも、クリーンエネルギーとして期待される「低炭素水素等」や、CO2を分離・回収して地中に貯留する「CCS」事業の法整備など、投資促進策の具体化が進んでおり、官民のGX投資は「実行」フェーズに突入しています。
2023年11月~12月に開催されたCOP28の決定文書では、「世界全体で再エネ発電容量を3倍に、エネルギー効率改善率を2倍にする」ことが記載されたほか、気候変動対策として「原子力」が初めて明記されました。
水素等やCCUSなど、日本のGXに向けた取り組みは、化石燃料に依存し、成長著しいアジアのGXにもつながります。日本は、「AZEC」(アジア・ゼロエミッション共同体)の取り組みを通じて、アジアのGX、ひいては世界のGXに貢献することを目指しています。
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資源エネルギー庁 調査広報室
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