スタートアップの未来と期待 学生たちの「SusHi Tech Tokyo」
(※本記事は東京都が運営するオンラインマガジン「TOKYO UPDATES」に2024年9月6日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)
東京都主催のイベント「SusHi Tech Tokyo 2024」内で行われた学生主体の企画である「ITAMAE」。スタートアップ業界に興味を持つ人が増えるよう、学生の視点からさまざまなプログラムが企画され、実施された。今回は、「ITAMAE」メンバーとしてStudent Programを実施した倉本花連さん、栁下遥さん、齋藤理人さん、郡山花凜さんの4名に、今回の活動を通じて得られた経験、スタートアップ・起業への想いについて語ってもらった。
学生とスタートアップ・起業を繋ぐ架け橋へ
「SusHi Tech Tokyo 2024」は、東京発スタートアップの増加、都市間連携による課題解決、東京における最先端技術の社会実装等を目的とし、都市リーダーやスタートアップ企業・ベンチャーキャピタル、最先端技術を有する企業が集ったイベントである。未来のビジネスや都市の在り方についてのセッションを行ったり、参加者向けのワークショップが行われたりし、東京都主導で実施された。その一環である「Student Program(学生企画)」を運営する学生チームとして発足したのが「ITAMAE」だ。
彼らはSusHi Tech Tokyoの本番イベントに興味を持ってもらうきっかけとなる「WASABI」というイベント、若者がグローバルに活躍するためのマインドセットに着目したセッション、「Pavilion」と呼ばれるイベント区画をデザイン・運営し、そこでスタートアップ関係者や学生向けのさまざまなセッションやワークショップを実施した。
慶應義塾大学4年の栁下遥さんは、今回ITAMAEに参加した理由をこう語る。「2022年にカナダに交換留学に行った際、自分がこれまで視野が狭く、特定のコミュニティにしか目を向けていないことに気が付きました。就職活動を終えたタイミングだからこそ、今まで知らなかったスタートアップの世界も知っておきたいと思い、今回参加することにしました」。
また、上智大学3年の齋藤理人さんは、「高校生の時に生徒会主催のビジネスコンテストで優勝したことをきっかけに、スタートアップをはじめとするビジネスに興味を持ちました。色々と活動していく中で、キャリア教育に興味を持ち、ITAMAEは学生にスタートアップ・起業という選択肢を与えてあげられる良い機会だと思い、参加しました」と語る。
それぞれが「学生にスタートアップ・起業のことを身近に感じてほしい」という共通の想いを持ち、ITAMAEメンバーとして集結した。
大盛況だったイベント
長期間の準備を行って迎えたイベント本番。当日の感想について慶應義塾大学3年の倉本花連さんは「複数のワークショップの企画・運営に携わったのですが、当日参加してくださった方々のアンケートの中に『心の底から楽しかった』というコメントがあり、それがとても嬉しかったです。また、普段は関わることのできない他大学の学生やさまざまな企業の方々と関わることができたのが良い経験になりました」と話してくれた。
また、慶應義塾大学3年の郡山花凜さんはこのように語る。「準備段階ではお客様が来てくれるのか、イベントも盛り上げられるのかどうかとても不安でした。結果的には学生の方々を含む非常に多くのお客様にご来場いただき、たくさんの方に喜んでいただけたので一安心でした」。
4人が口を揃えて「当日に人が集まるのか不安だった。」と話していたが、その不安は杞憂に終わったようだ。当日はどのセッション・ワークショップも定員以上の人が集まるなど、大盛況だった。
初めての経験、多くの困難
今回の学生主体のイベント運営は、彼らにとっては初めての経験だった。そのため、準備段階で多くの困難があったという。
「私が務めていたPRチームは、開催の3ヶ月前に結成されたチームだったので、とにかく時間がありませんでした。日々、目の前の作業に追われていて、チームとして上手く機能できなかったことが大変でした」と栁下さん。
齋藤さんは「とにかくリソースが限られていたので、チームビルディングが大変でした。また、企業側の方々とやりとりする中で、学生側と企業側の意見の擦り合わせも難しいことが多々ありました。」と話してくれた。一方、「とはいえ、知り合いの企業の方々に相談したり、イベント登壇を依頼できたりもできたので、上手くいった部分もあります。」と、これまでスタートアップ業界で働いてきた経験や人脈を活かすこともできたようだ。
初めての経験だからこそ、何をどのように準備すべきなのか、どんなチームが必要なのか、一から考える必要があり、準備が後手後手になってしまうことも多かったそうだ。
齋藤さんは次のように続ける。「振り返ってみるとまだまだ改善できることが多くありました。100点のITAMAEになればもっと凄いイベントになると思うので、まずは100点のITAMAEを目指したいと思います」
来年以降のITAMAEチームへの期待が高まる。
それぞれのスタートアップ・起業への想い
今回のイベント運営を通じて、スタートアップ・起業に対して想いの変化はあったのだろうか。倉本さんは「スタートアップに対してより親近感が得られました。私はどちらかといえば、起業する方々を支援したいという気持ちが強まりました」と、支援側になることで多くのスタートアップに触れたいという想いになったようだ。
当日開催されたセッション『DAY0からグローバル』で、起業する際には取りにいく市場を考えることがポイントだと聞いた郡山さんは、「自分もグローバルな視野を持って今後のビジネスに取り組んでいきたいと思います。」と、自らの今後のビジネスの方向性に確信を持った様子。
実際、郡山さんはすでに自身で日本酒を海外に広めるビジネスを手がけている。グローバルな視野を持ち、日本のカルチャーを広めていきたいと語る彼女に、大きな期待を抱かざるを得ない。
東京にはすべてが集まる、だからこそ何でもできる
ITAMAEメンバーである4名の大学生から見た東京の魅力とは何なのだろうか。倉本さんは東京を「カオスで貪欲な街」と表現する。また、郡山さんは「ヒト・モノ・カネがもっとも集まりやすい場所」であると語った。ビジネスを行うのに必要なリソースが集まりやすく、それに応じて挑戦や変化することに対して貪欲な人が集っている、東京はそんな印象の街のようだ。
また、東京でのおすすめの場所として、東京の中でも特に何でも集まっている「渋谷」、海外の甘味とは異なる日本独特の繊細な味が楽しめる「かき氷屋」、ものづくりの職人技を間近で見られる「酒蔵」など、思い思いの場所が挙げられた。
そして、東京に求める将来像として、齋藤さんは「大学生が全員どこかのタイミングで起業する街」、郡山さんは「どんな人でも手を挙げたらチャレンジできる都市」と、若い世代が当たり前にチャレンジし、それを後押ししてくれる東京像を語った。一方で、インドネシアからの留学生だった親友が「日本で働きたい」と言っていたものの、言葉の壁や文化の違いから日本での生活のしづらさを感じて母国に帰ってしまったという柳下さん。この経験から「海外の人が住んでみたいと思ってくれる街になってほしい」と話す。
熱い想いとエネルギーで溢れている大学生世代の彼らが中心となって、スタートアップや起業を通じて東京をより良い街にしていきたいという情熱を強く感じた取材であった。
取材・文/高橋佑児
写真/藤島亮
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