対話型オンライン教材のすららネット 進出先で事業化に成功

すららネットは、クラウド型のオンライン教材により、生徒1人当たりのコストを抑えつつ優れた教育の提供を目指している。途上国にも通用するビジネスモデルで教育の水準アップを実現する。

すららネットは、対話型アニメーション教材「すらら」の研究・企画・開発と販売、学校や塾など向けのコンサルティングを手掛ける企業だ。2012年にはeラーニングアワードフォーラムにて、教育部門最高峰の「日本e-Learning大賞 文部科学大臣賞」を受賞した。国内では約2500校が同社の教材を導入しており、海外でも55校に採用されている。

途上国でも良質な教育の機会を

同社は上場前、社員数が20名ほどだった2014年に海外進出を開始した。JICAの民間連携事業も活用してスリランカには2014年、インドネシアには2015年に進出し、現地でのニーズ調査、実証試験を実施し、プロダクトを開発した。プロジェクト終了後は両国で現地パートナー会社と共に事業化した。

インドネシアの小学校におけるすららの授業内活用

今回、ウェビナーで講演したすららネット執行役員・海外事業推進室の藤平朋子氏は、同社の持続可能なビジネスモデルについて次のように説明した。

藤平 朋子
  すららネット 執行役員・海外事業推進室 室長

「すららはオンライン型クラウドサービスで、生徒は自分のIDでログインして学習を開始します。生徒1人当たりの変動原価を抑制できることから、公立学校やNPOなど予算が豊富とは言えないユーザーには安価に販売してもビジネスとして成立します」。

デジタル技術の力を使ったこのような製品であれば、国内のみならず途上国の教育課題を解決できる可能性もある。そこで、すららネットでは創業当初から海外進出を目指していた。「まずプロジェクトベースで教育活動を立ち上げ、その後事業化する、という形で展開を進めてきました」と藤平氏は振り返る。

スリランカとインドネシアで開発した「Surara Ninja!」は、小学生向けの基礎的な算数の教材だ。算数を苦手とする子が多く、PISA学力ランキングでも下位にランクされるインドネシアでは、学力向上の切り札として小学校で使用されている。またスリランカでは、小規模な算数塾を通じてサービスを提供している。この塾は、マイクロファイナンス組織を通じてその会員の女性を塾の先生として養成し、運営するもので、現地女性に就業の機会を与える取り組みとしても評価され、SDGsビジネスアワードを受賞した。

このような取り組みの成果はすでに現れ始めている。例えばインドネシアにおいて、同社の教材を使用したクラスでは、使わなかったクラスと比べて正答率が20~50%、改善した。

「ただし、新興国の教育事業において中小企業が信用を得るのは簡単ではありません。政府が中小企業の進出をバックアップしてくれる意味は大きいと感じています」と藤平氏。企業が単独で海外事業を展開する際には様々な困難があるので、政府機関の活用、支援の獲得を検討する価値は高いという。また、期間が限られているプロジェクトでは、終了後の事業化を常に視野に入れて計画を立てることも重要だと同氏は指摘した。

 

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