慶大 再生医療リサーチセンターを川崎市・殿町に開設
慶應義塾大学再生医療リサーチセンターは、2024年9月26日に開所式を行った。同センターは、2024年4月に川崎市にある慶應義塾大学の殿町タウンキャンパス・殿町先端研究教育連携スクエアにおける研究センターとして発足したもので、センター長は慶應義塾大学教授の岡野栄之氏(月刊事業構想2023年12月号参照)。
開所式では、慶應義塾大学塾長の伊藤公平氏に加え、慶應医学部卒で参議院議員・医師の古川俊治氏、神奈川県知事の黒岩祐治氏、川崎市長の福田紀彦氏、経済産業省・文部科学省・厚生労働省の担当官が祝辞を述べた。
今回開設された慶大再生医療リサーチセンターは、川崎市殿町の国際戦略拠点キングスカイフロントにある。多摩川をはさんで羽田空港の対岸に位置する地域で、元・いすゞ自動車川崎工場跡地の約40万平方メートルの敷地を、ライフサイエンス・環境分野における研究開発から新産業を創出する「国際戦略拠点」として再開発した場所だ。この地域には現在、健康・医療・福祉・環境分野の企業や研究機関が進出している。2022年3月に、キングスカイフロントと羽田空港をつなぐ新しい橋「多摩川スカイブリッジ」が開通したことで、羽田空港(第3ターミナル)から車で約5分という交通利便性も獲得した。
この殿町エリアには、公益財団法人実中研が2011年に新研究所を開設したのを皮切りに、バイオテクノロジー関連企業の進出が活発化。その後、国立医薬品食品衛生研究所が2017年に全面移転するなど、ライフサイエンス研究の拠点が集まってきている。さらに、経産省の2022年度2次補正予算の「再生・細胞医療・遺伝子治療の社会実装に向けた環境整備事業費補助金」に、慶大を含む共同体が採択されたことで、リサーチセンター設置が実現した。同事業は、再生・細胞医療・遺伝子治療による患者の治療を適切に拡大していけるよう、科学的・客観的データによって治療法を確立するための環境を整備する、というもので、これにより研究と臨床応用のために必要な施設整備が可能になった。
スカイブリッジの羽田空港側には、藤田医科大学の次世代医療・研究拠点である藤田医科大学東京先端医療研究センターが2023年秋にオープンしている。ここでは、自由診療も利用した再生医療や、より精密な診断、先端的なリハビリテーションが提供されるようになっている。藤田医科大学理事長の星長清隆氏は、「連携により再生医療、細胞治療の有効性を明確にすることが可能になり、この治療を新たなステージと引き上げることができるものと確信しております」と期待を寄せる。
実際に患者に投与する治療用細胞の製造プロセスや品質特性評価の中核施設にするために、慶應義塾大学・藤田医科大学ジョイントラボも、殿町キャンパス内に開設された。リサーチセンターの開所式において、慶大研究担当理事の天谷雅行氏は、殿町・羽田再生医療拠点「CREAM TOYOHANE」の構想について紹介した。多摩川両岸の同エリアに集積した様々な大学、企業、公的研究機関により、殿町と羽田エリアにおいて、東日本における再生医療ハブをつくっていくという。
再生医療リサーチセンターのセンター長を務める岡野氏は、リサーチセンターの活動を紹介するとともに「米国ボストンのライフサイエンス系スタートアップの集積地であるケンダル・スクエアを見ればわかるように、持続可能なエコシステムの発展のためには人材育成が不可欠。この場所で、再生医療の実用化に必要な人材育成を進めていきます」と話した。