技術者が営業に挑戦 宇宙事業の問い合わせ10倍・売上2倍を達成
(※本記事は「協働日本」に2025年2月27日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

協働日本で生まれた協働事例を紹介する記事コラム「STORY」。
実際に協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビューを通じてお話を伺っていきます。
今回は、株式会社エルムの和田健吾氏・オバッグ ジョン セドリック氏・田畑章子氏に、協働プロジェクトを通じた営業・広報の変革とその成果、今後の展望について伺いました。
1980年、鹿児島県南さつま市で創業した電子機械器具開発メーカー・株式会社エルム。CD・DVD修復装置で世界シェア90%を誇り、近年は自動化・省力化機器、宇宙関連、特殊照明、環境エネルギーといった幅広い分野で技術開発を進めています。
しかし、主力商品のディスク修復機市場が縮小する中で、新たな柱として「宇宙関連事業」に注力。しかし、高い技術力を持つ一方で、「営業・マーケティングの知見不足」「市場における認知度の低さ」という大きな課題を抱えていました。
この課題を克服するため、協働日本との連携による営業・広報戦略の抜本的な見直しを開始。その結果、たった7か月で 売上は前年比2倍、SNSフォロワーは40倍、見積もり総額は約2億円という驚異的な成長を遂げました。
協働日本と宇宙関連事業の成長戦略を共に模索。協働プロジェクトを通じて得られた気づきや成果、今後の展望について語っていただきました。

宇宙関連事業で大きな成功事例を生み出したい
——本日はよろしくお願いいたします。まずは協働日本との出会いや、スタートしたきっかけについて教えてください。
和田健吾氏(以下、和田):よろしくお願いいたします。当社は長年、CD・DVD修復機の製造・販売を主軸にしてきましたが、近年のネット配信の普及により、ディスクメディアの需要が大きく減少しており、新たな事業の柱を模索する必要がありました。
このまま市場の変化に対応せずにいると事業全体の成長も停滞してしまうのではないかという危機感を持つようになる中で、複数ある事業のうち、次の柱となる事業の候補として、「宇宙関連事業」に取り組むことになりました。
——宇宙関連事業には以前から取り組まれていたのでしょうか?
田畑章子氏(以下、田畑):宇宙関連事業には1983年から参入し、特に地上局(人工衛星の追尾装置)の開発を手掛けてきました。特に、地上局と呼ばれる衛星追尾装置の設計・製造に長い歴史があります。
元々、鹿児島県にはロケットの射場が2つあり、県内の大学でも天文分野や宇宙関連の研究が多くなされています。実は、当社の創業者の一人である、現相談役(宮原照昌氏)が、昔からとても天体が好きで、南さつま市にある天文台で天文観察会を開くほどでした。
そんな相談役の個人的な繋がりの中から開発依頼を受けて製品を作り始めたことがきっかけでした。しかし、開発が始まった経緯から、これまでの販売はほとんどが口コミやご紹介で、積極的な営業活動を行えていませんでした。
Obag John Cedric氏(以下、オバッグ):私を始め、社員の7割以上は技術者。開発には自信があるものの、マーケティングやブランディングのノウハウが不足していました。その結果、市場のポテンシャルはあるのに売上が伸び悩むという課題に直面していたのです。
和田:そのような状況ですから、どうしても年度によって売上には大きな波がありました。どうにかしたくても、社内では如何ともしがたい……そんな折に鹿児島県内でも多くの事業者支援を行っている協働日本の存在を知りました。
マーケティングに強みを持つ協働プロの皆さんと取り組むことで「これを機に、事業戦略を根本から見直したい」と考え県の事業に応募しました。まずは宇宙関連事業でマーケティングの成功事例を作っていきたい、その思いでスタートした協働プロジェクトでした。

「売上の安定化」と「認知度向上」を目指し、営業・広報戦略を刷新
——実際に伴走支援がスタートしてからは、どのようなプロジェクトを進めているのでしょうか?
オバッグ:まず、協働日本から若山幹晴さん、国府田祐希さん、高山真宣さんの3名、そして当社から私たち3名がチームを組み、売上の安定化と認知度向上をテーマにプロジェクトを開始しました。
最初に取り組んだのは、自社の付加価値と課題の明確化です。これまで当社の販路は口コミが中心で、宇宙関連の企業やユーザーへの認知度が極めて低いことが浮き彫りになりました。
実際、エルムの製品は大学や企業に数多く納品されているにもかかわらず、ユーザーの多くはエルムの存在すら知らなかったのです。さらに、社員の70%以上が技術者であるため、営業・広報の専門知識が不足し、マーケティング戦略がほとんど確立されていませんでした。
そこで、まず自社製品の強みと市場での差別化ポイントを整理しました。エルムの製品は、ベースモデルにオプションを追加し、ユーザーの仕様にカスタマイズできる柔軟性が大きな特徴です。この強みをどう市場に伝え、効果的にアピールするかを議論しました。
ターゲット顧客が明確になったことで、『どうやって情報を届けるか?』という課題について、より具体的な戦略を立てることができました。
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