単なる「学び直し」ではない? いまさら聞けないリスキリングとリカレントの違い

現代は変化が激しく、AIやデジタル技術の普及により業種や職務が次々と再編される時代です。さらに「人生100年時代」と呼ばれるようになり、一生にわたる学びやキャリアの見直しが求められています。そうしたなかで注目されているのが、リスキリングとリカレントです。この記事では、それぞれの定義と違いを整理し、知っておくべきポイントを解説します。
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リスキルとリカレント それぞれの意味

近年よく耳にする「リスキリング(Reskilling)」とは、これまでの専門領域とは異なる新たなスキルを身につけ直すことを指す言葉です。ここで見落としがちな重要なポイントは、リスキルが単なる「学び直し」ではなく「方向転換を伴う学び」だということです。

たとえば、デジタル分野に対応できるようプログラミングやAI分析を学ぶ、新規事業開発のためにマーケティングを習得する、といったケースが典型です。これは自らの意思に基づく学びですが、企業側が戦略的に従業員のスキルを再構築する会社主導型のリスキリングも増えています。経済産業省では「新たな職業や職務に就くために、必要なスキルを獲得・習得すること」(2022年)とリスキリングを定義しており、職業転換や新分野への適応を目的としていることがわかります。

また、OECD(経済協力開発機構)は「既存の職務におけるスキルが時代遅れになるのを防ぐため、新たなスキルを習得すること」としており、自動化やAI化による雇用の変化に備える意義を強調しています。さらに、世界経済フォーラムでは「今後必要とされる新しいスキルに従業員を備えさせる、戦略的かつ先行的な取り組み」(2020年)と捉え、企業が未来を見据えて人材育成を進めることの重要性を説いています。


一方、「リカレント(Recurrent)」という言葉には「繰り返し・循環」という意味があり、リカレント教育は人生の各段階で学び直す仕組みを整える考え方を指しています。これは単なる「スキルアップ」とは一線を画す概念です。昨今、大学や専門教育機関が社会人向けコースを拡充していますが、働きながら学びを重ねることで、新しい知見や技術を随時アップデートできるというのが特徴です。

まとめると、リスキリングは目的地の変更、リカレントは同じ航路の継続的な最適化といえます。この違いを理解することで、自分に本当に必要なのはどちらなのかが明確になるはずです。

なぜ今、リカレント教育が求められているのか

「60歳で定年、そして悠々自適」—かつての常識は今や過去のものとなりました。70代・80代でも社会活動に意欲を持つ人々が増えています。また、長寿化によって就業可能期間が延び、長期的視野でキャリアを捉え直す必要が出てきました。人生100年時代において、私たちは40年以上の職業人生を歩むことになります。そこでカギとなるのがリカレント教育です。

リカレント教育のメリットは、必要なタイミングで必要な学びを取り込むことで、スキルのみならず自分自身のキャリア観を柔軟にアップデートしていける点です。

一方でリカレント教育に取り組む際、本人が「なぜ学ぶのか」「どのようなキャリアを描きたいのか」を明確にしないまま突き進むと、成果につながりにくい場合があります。多くの人がここでつまずいてしまいます。そこで役立ててほしいのがキャリアコンサルタントです。キャリアコンサルタントは、これまでの経歴や強み、将来の展望を整理し、学びとキャリアを連動させるためのロードマップ策定をサポートすることが役割。客観的なスキルの棚卸しに始まり、リスキリングとリカレントのどちらが今の自分に必要かを考える手助けもしてくれるはずです。

学びを最大化するキャリアコンサルティング

リスキリングとリカレントの違いを理解し、自分や組織に合った学び方を選択することは、人生100年時代における大きなポイントです。そのうえでキャリアコンサルタントを活用することで、自分の強みや将来像を客観的に捉え、実行可能な学び直しの計画を立てることが可能になります。

「いつ」「何を」「どのように学ぶか」を意識することで、私たちのキャリアはさらに豊かに変化していきます。ぜひ今一度、自分自身の現在地を見つめ直し、より長い視点でキャリアを構想するために、キャリアコンサルタントを積極的に活用してみてはいかがでしょうか。

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酒井
酒井 信幸
キャリアコンサルタント/学校法人先端教育機構 社会構想大学院大学事務局長 兼 先端教育研究所研究員